今号では、前号に引き続き『令和5年度税制改正大綱』より、「新NISA制度」、「防衛費増税」について解説していきます。
1.新NISA
ご存知の方も多いかと思いますが、NISAとは、「少額投資非課税制度」のことで、NISA口座内の金融商品(株や投資信託)から生じる利益(売却益や配当等)について、非課税とする制度です。
イギリスのISA制度の日本版(なのでNISA)として2014年からスタートした本制度ですが、後述の様々な理由により使い勝手が悪く、一般への普及はいまひとつでした。
そこで今回の税制改正では、その内容の大幅な拡充及び恒久化を果たした、新しいNISA制度が創設されることとなりました。
(1)枠の併用が可能に
現行NISAは「一般NISA」と「つみたてNISA」のいずれか選択式であり、年間の投資上限は最大で120万円まで、単価の高い銘柄では購入自体できないこともままありました。
新NISAでは、“成長投資枠”(現一般NISAの後継)と、“つみたて投資枠”(現つみたてNISAの後継)が併用可能になり、この併用により年間最大360万円までの投資が可能となります。つまり枠毎の年間投資上限額や非課税枠も倍以上に拡充されています。
それぞれの枠では投資可能な対象商品が異なっており、広範囲の株式・投資信託を対象とするのが“成長投資枠”、金融庁が指定する長期投資・積立・分散投資向きの投資信託に限定されるのが“つみたて投資枠”です。
(2)制度の恒久化、非課税期間も無期限に
現行NISAは制度自体に終わりがあり、これがそもそも個人の資産形成という趣旨に反しており、いつ終わるのか気にしながら運用しなければならないという欠点があったのですが、新NISAでは制度自体を恒久化、非課税期間も無期限となったため、いつでも始められ、かつ、長期間の投資による資産形成が可能となります。
また、期間の無期限化に伴い、面倒だったロールオーバーの手続きも不要となります。(※ロールオーバーとは、非課税期間が終了する投資枠内の金融商品を翌年分の非課税投資枠に移すことで、引き続き非課税での運用が出来るようにする手続きをいいます。但し、翌年分の非課税枠を使うので、ロールオーバーに利用した分は新規投資の枠が削られることになります。)
(3)生涯非課税限度額の採用
現行NISAでも非課税枠はありましたが、こちらは保有している金融商品を売却しても、その分の非課税枠は復活しなかったため、非課税の恩恵を受けるには基本的に一度買った銘柄を保有し続けなければなりませんでした。
しかし、新NISAでは、「生涯非課税限度額」という新たな考え方の非課税枠が採用され、こちらは、売却して空いた枠は翌年に復活し、再度非課税枠として利用することができるようになります。
これにより、損切りや別銘柄への買換え、ライフイベントに合わせた入出金などがしやすくなります。
なお、非課税枠の1,800万円は全て“つみたて投資枠”で埋めることも可能ですし、若しくは1,200万円まで“成長投資枠”の株式などに充てることも可能です。
ちなみに、新NISAと現行NISAは別枠となりますので、現行NISAで非課税枠を使い切っていたとしても新NISAでは新たに1,800万円の非課税枠が与えられます。
また、新NISAが令和6年1月1日より稼働するのに合わせ、現行NISAの買付は令和5年12月31日をもって終了となりますが、それまでに口座内に保有している金融商品については、期限まで、新NISAの枠外で、現行NISAの非課税措置が適用されます。
ただし、現行NISA口座から新NISA口座へのロールオーバーはできませんので、非課税期間終了時点で払い出すか、課税口座への移管が必要な点はご注意ください。
(4)ジュニアNISAは廃止
ジュニアNISAは未成年のためのNISA制度で、18歳まで原則払出しが不可であり、成人に伴い通常のNISA口座へ自動的にロールオーバーされる制度でしたが、こちらは廃止が決まっており、新規投資は令和5年12月31日をもって終了になります。
令和6年以後も「継続管理勘定」へロールオーバーすることで非課税で保有することが可能ですが、子供の成人と同時に口座が廃止されるため、こちらも払出しか課税口座へ移管が必要です。
5.防衛費増税
最後に、なにかと話題になっていた防衛費増額の財源確保のための増税ですが、詳細は以下の通りです。
①法人税 : (法人税-500万円)×4%~4.5%
②所得税 : 所得税×1%
③たばこ税 : 一本当たり3円
法人税は、出資金1億円以下の法人(出資持分のない法人を含む)については、所得金額が約2,400万円以下であれば課税されない見込みです。
所得税は、防衛費分1%の増税に代わり、復興特別所得税が1%引下げになるので、トータルの税額に変わりはありませんが、令和19年までとなっていた期限が延長(いつまでかは記載なし)されます。
適用開始は令和6年以降の適切な時期との記載のみでした。