財務・税務戦略

税金のキャッシュレス納付について

財務VOL.169

近年、納税のキャッシュレス化が進められており、2022年の12月より、国税のスマホ決済での納付「スマホアプリ納付」が、また地方税についても、2023年4月より地方統一QRコード「eL(エル)-QRコード」を用いたスマホ決済アプリによる納付が導入されました。
今号では、これらキャッシュレス納付について解説して参ります。

1.国税
2022年12月1日より運用が開始されました。
「スマホアプリ納付」という名称ですが、専用のアプリがある訳ではなく、〇〇Payなどの決済アプリを使用して納付が出来るという内容です。

(1)利用可能な税金
法人税消費税所得税相続税贈与税など、ほぼ全ての税目が対応可能です(延滞税、加算税含む)。

(2)納付手順
国税庁HPの「国税スマートフォン決済専用サイト(スマホ専用)」から、以下の手順で操作を行います。

ⅰ)支払方法の選択
「PayPay」「d払い」「auPAY」「LINEPay」「メルペイ」「amazonPay」から選べます(楽天Payは対象外)

ⅱ)利用者情報
氏名、郵便番号、住所、電話番号、メールアドレス(納付後に内容を記載した「納税手続完了メール」が送達ため必須)管轄の税務署を入力(整理番号は空欄で構いません)

ⅲ)納付内容
税目、課税期間、申告区分(確定申告など)、納税額を入力

ⅳ)内容の確認、納付
納付後に「納付内容のダウンロード」から、明細をDLできます(一度サイトを閉じると再表示できませんのでご注意ください)

(3)メリット
①金融機関に出向く必要がない

②いつでも(夜間休日問わず)納税(決済)できる

③手数料が無料

クレジット納付の場合、1万円毎に約83円の手数料がかかりますが、スマホアプリ納付は無料最大のメリットと言えます。

(4)デメリット
①納付書が発行されない
クレジット納付などと同様、納付書が発行されません。
支払いが個人通帳やキャリア決済による場合、納税の事実の把握が困難なため、上述の「納付内容のダウンロード」の明細や納付手続完了メールなどを別途ご用意いただく必要があります。

②限度額が30万円
一度に取扱える金額の上限が30万円までとなっています。総額が30万円超の場合、複数回に分ければ納付は可能ですが、決済サービス自体の利用上限が設定されている場合もあり、例えば、PayPayなどは日に50万円、月に200万円が限度ですから、納付が数日に渡る、若しくは納付自体が不可能な場合もあり、基本的に少額の納税を想定したサービスといえます。

③都度、情報入力が必要
納付の際には毎回、上記(2)の情報入力の手順が、納める税目の数だけ必要です(口座振替やダイレクト納付は不要)。

 

2.地方税
2023年4月1日より運用開始となっています。
冒頭で述べた通り全国統一規格のQRコード「eL-QRコード」を使用した納税方法が特徴です。

(1)利用可能な税金
固定資産税自動車税軽自動車税個人事業税不動産取得税についてはほぼ全ての自治体が対応しています。
住民税については、一部対応している自治体もあるようですが、特別徴収の場合、従業員の異動により納付額が変動する事例が多く想定されることから、QRコード決済に適さない(予め印字された金額のみ使用可)ため、対応していない自治体が多いようです。
ただし、普通徴収については個人から修正等がない限り税額が変わらないため、対応している市町村も多ようです。
また、事前に金額を印字できない法人県民税法人市民税なども未対応となっています。

(2)納付手順
使用する決済アプリによって詳細は異なるものの、基本的に公共料金などの支払いと同様、アプリを起動納付書に印字されているQRコードを読み取り支払い確定、のみで完了します。
対応する決済アプリは国税より多く、「楽天ペイ」「PayB」「ファミペイ」なども加えた23種類が現時点で対応済ですが、「LINEPay」、「メルペイ」及び「amazonPay」については未対応となっています。

(3)メリット
①情報入力の手間がない(国税と異なりQRを読み取るだけ)
上記以外は国税と重複するため省略します。

(4)デメリット
①納付書が発行されない
となると気になるのが車検ですが、現在はオンラインでの納税確認システムが運用開始されていますので、原則車検時の提示は不要です。ただし、キャッシュレス決済の結果がシステムに反映されるのに2~3週間程度かかるため、納付時期と車検時期が近い方は従来通り金融機関等で決済された方が良いでしょう。

また、他の税目についても、納税証明書の発行までに同様に時間を要する点にご留意ください。

②納税完了の通知等がない
国税版との違いですが、eL-QRコードによる納付の場合、納付後に、その内容の明細の発行や、完了通知のメール等がありません(決済アプリの支払システムをそのまま使用しているため)。

そのため、納付の事実を確認するには、決済時の画面のスクリーンショットを撮影するか、決済アプリの取引履歴などをご用意いただく必要があります。

③限度額が30万円
国税と同様の制限ですが、こちらはQRコード決済という性質上、事前に納付書に記載されている金額が30万円を超えている場合には、そもそも利用が不可となります。
利便性はある制度ですが、領収書が発行されず、通帳やクレジット明細等では支払いが確認できない取引となりますので、事実確認のできる資料の保存が必要となる点はくれぐれもご注意ください。

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