大方の予想通り今年も個人の確定申告期限が延長されました。既に申告内容が確定している方も多いかと思いますが、申告前の最終情報としてコロナ関連の税務トピックについていくつか情報提供させて頂きます。
1.申告・納期限の延長
まずは申告・納付期限についてですが、令和2年分の個人の確定申告について、以下の通り延長されております。
〔申告・納期限〕
科目 | 当初 | 延長後 |
所得税 | R3/3/15(月) |
R3/4/15(木) |
消費税 | R3/3/31(水) | |
贈与税 | R3/3/15(月) |
〔振替納税の振替日〕
税目 | 当初 | 延長後 |
所得税 | R3/4/19(月) | R3/5/31(月) |
消費税 | R3/4/23(金) | R3/5/24(月) |
2.新型コロナに関連した支出の医療費控除
(1)医療費控除の原則
①医師等による診療や治療のために支払った費用
②治療や療養に必要な医薬品の購入費用
まずは医療費控除の対象となる支出の上記原則をふまえた上で以下、コロナに関連した事例を見ていきましょう。
(2)マスク・消毒用アルコール
マスクや消毒用アルコールは新型コロナの影響で増えた支出の筆頭かと思われますが、残念ながら医療費控除の対象とはなりません。マスクなどは病気の「予防」を目的とするものであるため、上記(1)の①②には該当しません。
(3)PCR検査費用
PCR検査費用については、控除の対象になる場合とならない場合があります。
①対象となる場合
新型コロナに感染している疑いのある方に対して、医師等の判断(保健所からの指示含む)により受けたPCR検査費用は、医療費控除の対象となります。
②対象とならない場合
感染していないことを証明する目的で受ける場合など、自己の判断により受けたPCR検査費用は、医療費控除の対象となりません。ただし、その検査の結果、「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、その検査費用についても医療費控除の対象となります。
(4)オンライン診療に係る費用
各費用の取り扱いは以下の通りです。
①医療費控除の対象となるもの
1.オンライン診療料
2.オンラインシステム利用料
3.処方された医薬品の購入費
②医療費控除の対象とならないもの
1.処方された医薬品の配送料
ほとんどの費用が対象となりますが、配送料のみ医療費控除の対象となりませんのでご注意ください。その他、タクシーを利用した場合のタクシー代については、“急を要する”あるいは“電車、バス等を利用できない”等の合理的な理由がある場合には医療費控除の対象とすることが可能ですが、感染の疑いがあるため医師の判断等によりタクシーで通院したケースも同様のケースとして認められると判断して良いでしょう。
3.新型コロナ関連の助成金の収益計上時期
昨年から、新型コロナ対策として国・地方自治体から様々な助成金の給付が行われましたが、それらの助成金がどのタイミングで収益となるのかご存知でしょうか?
以下、医療機関での申請が予想される代表的な助成金の取り扱いについて解説します。
(1)収益計上の原則
まず基本的な考え方として、収入の計上時期は、原則としてその収入すべき権利の確定した日の属する年分(法人であれば事業年度)となります。これは、助成金でいえば国・地方自治体から助成金等の支給が決定された日を指します。
(2)持続化給付金
これについては原則通り、交付決定日が収益計上時期となります。
(3)感染拡大防止等支援事業における補助金
こちらは感染拡大防止対策等に係る費用を補填するための助成金です。
このように「特定の支出を補填するもの」であらかじめ所定の手続きを行ったものついては、その経費と助成金の収入が同じ年中で対応するよう、助成金の収入計上時期はその経費が発生した日の属する年分として取り扱います。
これは、その年中に助成金の交付決定がされていない場合でも同様で、支給額が決定していない場合でも見積計上が必要となります。
当助成金は“すべて費用支出済の状態で申請”“一部支出済、一部申請後に支出予定での申請”“すべて申請以後に支出予定”というように、申請パターンがいくつか存在しますので、申請パターンに応じて上記趣旨に即した処理が必要となりますので注意が必要です。
(4)雇用調整助成金
最後に、こちらも内容は従業員の休業手当という費用を補填するための助成金です。
そのため、雇用調整助成金を利用した場合には休業手当を支給した日の属する年分に収益を計上する必要があるのですが、新型コロナに伴う特例措置に基づく雇用調整助成金についてのみ取り扱いが変わります。
特例措置による雇用調整助成金は、通常の申請手続きに必要な「休業等計画届」の事前提出が不要とされていることで、事後的な補填の性質があるものと見なされるため、交付決定のあった日の属する年分の収益として処理することが認められます。