今号では、今年4月1日からの「成年年齢の引き下げ」による各種税法への影響と、今月22日に発表された「公示地価」の内容について解説していきます。
1.成年年齢の引き下げ
民法の改正により、令和4年4月1日以降、成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられることは皆様ご承知おきのとおりです。明治時代から実に140年ぶりの改正であり、これにより様々な変化が生じることとなりますが、今回はその中でも主に相続税や贈与税関連に影響を与える項目について抜粋して見ていきましょう。
① 〔遺産分割協議への参加〕
未成年者が相続人となった場合、法律行為の制限を受けることから、親権者が法定代理人として代わりに協議に参加することとなっていますが、成年年齢の引き下げにより、令和4年4月1日以後は、同日時点で18歳以上であれば、遺産分割協議に参加することができるようになります。
② 〔未成年者控除〕
相続人が未成年者の場合、満20歳になるまでの年数×10万円(1年未満切上)を相続税額から控除できる規定でしたが、この対象年齢が、令和4年4月1日以後に発生した相続については満18歳までに変更となります。この対象年齢の引き下げに伴い、2年分の控除額の縮小(最大20万円)が生じることとなります。
③ 〔直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率〕
贈与には一般贈与と特例贈与があり、特例贈与となる「直系尊属(父母・祖父母)から20歳以上の子や孫への贈与」については、一般贈与よりも税率が低く設定されています。
この場合の受贈者(子や孫)の年齢要件が18歳へ引き下げられるのですが、贈与税の年齢要件はその年1月1日時点の満年齢で判定されますので、令和4年中の贈与については、3月31日までの贈与については従前どおり1月1日時点で20歳であれば特例税率の適用、4月1日以降の贈与であれば1月1日時点で18歳であれば特例税率の適用となりますのでご注意ください。
④ 〔相続時精算課税制度〕
60歳以上の直系尊属から20歳以上の子や孫に対する贈与について、2,500万円までの範囲で課税を相続発生時まで猶予する規定です。
こちらも受贈者である子や孫の年齢要件が変更となり、その年1月1日において18歳であれば、令和4年4月1日以後の贈与について制度の適用が可能となり、従前と比較して2年早く適用を受けられることとなりました。
⑤ 〔住宅取得等資金贈与の非課税〕
父母・祖父母から居住用住宅の新築等のための資金贈与を受けた場合に、一定額を非課税(非課税枠は贈与する年や住宅の種類により変動)とする規定です。
こちらもその年1月1日において18歳であれば、令和4年4月1日以後の贈与については制度の利用が可能となります。
2.公示地価
今月22日に国土交通省より公示地価の発表がされました。
全用途平均 | 住宅地 | 商業地 | |||||
R3年 | R4年 | R3年 | R4年 | R3年 | R4年 | ||
全国 | ▲0.5 | 0.6 | ▲0.4 | 0.5 | ▲0.8 | 0.4 | |
三大都市圏 | ▲0.7 | 0.7 | ▲0.6 | 0.5 | ▲1.3 | 0.7 | |
東京圏 | ▲0.5 | 0.8 | ▲0.5 | 0.6 | ▲1.0 | 0.7 | |
大阪圏 | ▲0.7 | 0.2 | ▲0.5 | 0.1 | ▲1.8 | 0.0 | |
名古屋圏 | ▲1.1 | 1.2 | ▲1.0 | 1.0 | ▲1.7 | 1.7 | |
地方圏 | ▲0.3 | 0.5 | ▲0.3 | 0.5 | ▲0.5 | 0.2 | |
地方四市 | 2.9 | 5.8 | 2.7 | 5.8 | 3.1 | 5.7 | |
その他 | ▲0.1 | ▲0.1 | ▲0.6 | ▲0.1 | ▲0.9 | ▲0.5 |
«動向»
(1)全国平均
全用途平均としては0.6%の上昇、住宅地は0.5%、商業地も0.4%と、いずれも2年ぶりの上昇に転じました。
コロナ禍の影響が徐々に緩和し、若干の回復傾向にはあるものの、その度合は一律ではないようです。
住宅地は、景況感の回復を背景に、低金利環境の継続、住宅取得支援施策等による下支えの効果もあり、需要が回復。また在宅勤務の浸透により、住宅地のニーズが多様化、都市中心部だけでなく、その周辺部にも上昇範囲が拡大しています。
商業地も、同じく景況感の改善により、店舗やマンション用地の需要が高まり、上昇へ転じた地点が多いですが、生活必需品などを扱う店舗の多い地域や再開発地域では上昇が見られるものの、観光の客足が回復していない地域や、飲食店等が集中する地域などでは、下落が続いているところもあるようです。
(2)三大都市圏
東京圏、大阪圏、名古屋圏のいずれも全体としては2年ぶりに上昇に転じました。ただし、商業地は東京圏、名古屋圏は上昇に転じたものの、インバウンドへの依存が大きかった大阪圏に関しては横ばいに留まっています。
また同じ大阪圏でも、国内観光客の回復が見込まれる京都が上昇に転じた一方、大阪ミナミに関しては前年に引き続き下落率全国ワースト(▲15.5%)を記録するなど、インバウンドへの依存度により明暗が分かれたかたちとなっています。
とはいえ、価格の相場自体はアフターコロナを見据え、コロナ前と変わらない水準で取引されているようです。
(3)地方圏
全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年ぶりに上昇に転じました。
特に地方四市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)は前年にも下落を免れていましたが、今年も上昇を継続、さらに上昇率を拡大しています。
その他の地域では下落が続いているものの、下落率は徐々に縮小しています。