前回、これからの時代、雇用主の労務コンプライアンスはますます多岐に渡るだけでなく重要度も増すため、もはや院長お一人では対応が難しいであろうことから、弊社がサポートさせて頂きますというご案内を差し上げました。その後、この状況に危機感を持っておられた先生方から何件ものご依頼があり、現在、お申し込み順に対応させて頂いているのですが、実際、サポートに入らせて頂くと、かなり労務リスクの高いまま経営されている先生方も多く、これまで何も無かったとしても、今後、大事になる可能性もありますので、やはり、今のうちに整備しておくに越したことはありません。もし、サポートをご検討中の先生方は、是非、何も起こっていない今の間に、ご用命頂ければと存じます。
【思い当たることはありませんか?労務リスクの高い事例】
先述しました「労務リスクが高い」状態とは、例えば、36協定が未提出にも関わらず、当然のように残業を認め、放置している、しかも、その残業も規律やルールがないためダラダラ残業であり、また、残業代の単価も厳密に計算していないため法定よりも高く払っているというような状態です。
この状態の何がリスクかと申しますと、まず、ご存知の通り、36協定を出さずに残業させるのは労基法違反で『6ヶ月以下の懲役又は30万以下の罰金』となりますし、ダラダラ残業を認め続けるのは、無駄な人件費を払い続けるということになり、ただでさえ賃金が上がっている昨今、今後の経営に支障が出るのは必至です。
また、今後、残業のルールを決め、残業単価も法定に戻すとしても、それはスタッフにとって賃金が下がる話となるため事業主の一存ではできず、合意が得られなければ「不利益変更」とされるかも知れません。
その他にも、有給休暇の管理をしておらず、該当者に年5日間の取得をさせていないのも労基法違反で、懲役はありませんが該当者1人につき30万の罰金となりますし、そもそも、有給休暇が取得できない職場は定着に影響します。
また、「自己都合退職の申し出は3ヶ月前」と就業規則に定めておきながら、スタッフだけでなく院長ですら知らず「いきなり退職」を許している、しかも、就業規則に引き継ぎのことが書かれていないので、いきなり辞められても何も言えない、他、服務規程があっても誰も知らないので風紀は乱れ、注意・指導しようにも規程の内容が薄く、その根拠にならない等々…。結局、就業規則や各種規程があったとしても、それを運営に使っていなければ、全く意味がないのです。
【コンプライアンスのためには、まずは立法主旨の理解を!】
前回の案内は、あくまでも「整備」について、何をしなければならないかを列挙しましたが、国も意味なく事業主に義務を押し付けている訳ではなく、全国で起こっている労働問題を少しでも解決するために法律を作っています。例えば、「働き方改革」も過労死問題を解決するため、そして、働く時間だけが問題ではなく、その置かれている状況も鑑みる必要からパワハラ法を、労働力不足を少しでも解消するべく、出産や介護での離職を少しでも緩和するために育児介護休業法を、という具合に改正しており、同じ整備をするのであれば立法主旨を理解して進めて頂くことをお勧めします。
【労働契約は双方の「合意」がベース=合意形成を!】
では、今後、どうすれば良いのかですが、当然、法改正に基づく整備は行わなければいけませんが、先述の通り、形だけではなく内容を理解し、その都度、スタッフの皆さんに解説し、それに基づいた当院の対応も説明して下さい。
まず、これを地道に続けることにより、説明の内容如何に関わらず、院長はきちんと対応しようとしていることを分かってもらえるようになり、雇用主としての信用はしてもらえるようになります。
次に、就業規則や各種規程について、現行内容を確認し、「なぜ、こうしているのか」という理由を説明して下さい。基本的なところから、例えば、今の診療時間にしている理由、準備や片付けの時間を今の時間にしている理由、どのような業務が残業の対象と院長は考えているのか、辞める際、3ヶ月前に申し出て欲しいのはなぜか、有給の申請は1週間前、連続の場合は1ヶ月前に申し出て欲しいのはなぜか、定年が60歳なのはなぜか…等々。思い付くだけでもかなりの項目があると思いますが、要は、「なぜ」を伝えることで、適当に決めているのではなく、ひとつひとつに根拠がある=院長はしっかり考えてくれていると信頼感が増すのです。
【ここまでの環境ができれば、今後、労務問題に憂いなし】
今回の機会に、整備だけでなく、このような説明を行い、信頼関係の下地を作っておくことで、今後、スムーズな運営ができるだけでなく、労務についてスタッフとのタフな話し合いが必要になった場合、建設的に話し合うことができます。整理すると『整備→理解→説明→運用』、そして『信頼関係の構築』で、この環境を作ることができれば、まず、労務で困ることは激減しますので、是非、取り組んで頂きたいですし、ご支援が必要であれば、ご用命頂ければ幸甚です。