財務・税務戦略

令和7年度 税制改正大綱!

財務VOL.185

昨年12月20日、政府与党より令和7年度の税制改正大綱の発表がありましたので、今回はこの内容を確認していきます。

1.「103万円の壁」引き上げ
所得税がかからない給与の収入金額(いわゆる「103万円の壁」)について、123万円に引き上げられる見込みです。
また、子どもを扶養親族にするための年収要件についても見直されることになります。
まず103万円の壁の引き上げについてですが、具体的には「基礎控除」「給与所得控除の最低保証額」それぞれ10万円ずつ引き上げられます。
基礎控除48万円⇒58万円
給与所得控除55万円⇒65万円合計123万円です。

ただし、基礎控除は所得額が2,350万円を超えるまでは固定ですが、給与所得控除年収の増減で細かく控除額が変動する仕組みになっており、今回引き上げられたのは年収190万円以下の場合に固定で引かれる「最低保証額」部分のみです。190万円を超えてからの控除額は従来通りのため、実質的に基礎控除部分の10万円のみの引き上げになる方も多いでしょう(10万円に所得税率を乗じた金額が年間の減税額です)。
なお、所得額が2,350万円を超えると基礎控除についても従来通り控除額が段階的に減少するため、全く恩恵がない場合もあります。

また、この改正により、扶養控除関連の適用基準金額(収入)が次の通り変更となっています。

・配偶者控除:103万円⇒123万円

・配偶者特別控除(満額ライン):150万円⇒160万円

・寡婦・ひとり親控除(子どもの収入):103万円⇒123万円

・勤労学生控除:130万円⇒140万円
(※上記数値に関しては現在も政府与党と国民民主党との協議が続いており、変更となる可能性があります)

次に、子どもを扶養親族にするための年収要件について、19歳以上23歳未満の親族(大学生のお子様等)は特定扶養親族として63万円の所得控除枠が設けられていますが、アルバイトなどで子どもの年収が103万円を超えると適用対象外となっていました。

そこで新たに創設されたのが「特定親族特別控除(仮称)」です。

これにより、年収150万円までは満額の63万円150万円を超えると段階的に控除額は下がりますが(61万円~3万円)188万円までは控除が受けられるようになりました(188万円を超えるとゼロ)

上記の引き上げは令和7年分の所得税から適用予定です(特定親族特別控除などは年末調整で適用予定)。

なお、住民税についても「給与所得控除の最低保証額の引き上げ」「特定親族特別控除(仮称)の創設」がされる予定ですが、影響が大きい基礎控除については現状維持となりました。こちらは令和8年分の住民税より適用されます。

2.iDeco改正(改悪?)
(1)掛金の上限引き上げ
加入資格の区分ごとに次の通り増額されます。
①個人事業者
6.8万円⇒7.5万円(+7千円)※国民年金基金との合算枠

②会社員等(企業年金あり)
2万円⇒6.2万円(+4.2万円)※企業型DCとの合算枠

③会社員等(企業年金なし)
2.3万円⇒6.2万円(+3.9万円)

 (2)加入年齢の引き上げ
加入可能年齢が、個人事業者は60歳未満から70歳未満に、会社員等は65歳未満から70歳未満に引き上げられます。
対象となるのはiDecoに加入していた者、若しくは企業年金の資産をiDecoに移換できる者です。
iDecoは掛金が全額所得控除運用利益も非課税と節税効果が高いので、今回の掛金と加入年齢の引き上げは歓迎すべきですが、改正の内容は良いことばかりではありません。

(3)受取時のルールの変更
いわゆる「5年ルール」が10年に延長されます。
退職金を受け取った場合、「退職所得控除」という多額の控除が受けられます(iDecoは加入年数、退職金は勤続年数に応じ、20年以下なら40万円×年数、20年超なら800万円+70万円×〔年数-20年〕で計算)。
これにより退職所得にかかる所得税は大幅に軽減されていますが、先にiDecoを退職一時金で受取り、その後勤務先から退職金も受け取った場合、その間隔が5年以下だと加入年数と勤続年数のうち重複する部分については、一方でしか控除を受けることができません。
例えばiDecoの加入年数が10年、会社の勤続年数が15年なら、10年分はiDecoで控除、残った5年分を退職金から控除となります。
しかし、iDecoと退職金の受取りの間隔が5年超の場合、これまでは両方で満額の控除を受けることができました(上記の例で、iDecoで10年分、退職金で15年分)。
それが今回の大綱で、間隔が5年から10年に延長されることになりました。

iDecoの受取りは60歳からですから、両方で満額の控除を受けようとすると、最短でも70歳まで間を置かなければなりません。
この改正は令和8年1月1日以後にiDecoの一時金の支払いを受け、同日以後に退職金を受け取った場合に適用されます。ちなみに勤務先からの退職金を先に受け取った場合の19年ルールなどもありますが、そちらは次号以降、上記改正の詳細な影響なども含め、まとめて解説していきたいと思います。

3.防衛費増税
法人税が500万円超の場合、超えた部分の税額の4%につき「防衛特別法人税」が課されることになります。
法人税率は23.2%ですので、約1%程度の増税となります。
こちらは令和8年4月1日以後開始の事業年度より適用予定です。

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