労務・人材活性化

スタッフを知悉できる『アタッチメント理論』とは?

経営VOL.181

突然ですが、先生方は、「アタッチメント理論」というものをご存知でしょうか。
これは、イギリスの児童精神医であるジョン・ボウルビィが提唱した、「保護を与える母」と「保護を求める子」の『母子関係の理論』です(日本でも昨年12月22日に「こども大綱」の中の「こども施策」に於いて、アタッチメントの重要性を打ち出す閣議決定がなされています)。
しかし、この「保護を与える側」と「保護を求める側」という関係は、幼少期の親子関係だけではなく、年齢を経るにつれて、先生と生徒先輩と後輩友人同士恋人同士夫婦関係と続きますので、今では、生涯に渡って必要な『人間関係の理論』として研究が進められています。
そして、生涯の中でも、社会に出た殆どの皆様が経験する「職場」における、上司・部下先輩・後輩同期・同僚等の関係性についても活用できる理論ですので、スタッフさんとの関係性や組織についてのご相談が多い今、明日からでも使って頂ける知識として、今号にてご紹介させて頂きます。

【そもそも“アタッチメント理論(愛着理論)”とは?】
動物には、「生存欲求」として食欲や睡眠欲等がありますが、それと同じレベルで「危険を回避して安心したい」という本能的な欲求も備わっています。そして、危機を感じたり、不安を感じたりした場合に、信頼のおける特定の人に近付いて安心感を得ます。これを「アタッチメント(愛着)」といい、信頼のおける特定の人は「アタッチメント対象」といいます
そして、特に幼少期におけるアタッチメント対象との関係性が、その人の将来の人間性や社会的適応性にどのような影響を及ぼすかを問うのが「アタッチメント理論」なのです。

【アタッチメントには複数のスタイル(型)がある?】
人間は、危機や不安を感じると信頼できる人と繋がることで安心しようとする本能的欲求があり、その行動を取ることは先述の通りですが、そのスタイルは人によって大きく違い、戸惑った経験をお持ちの先生も多くおられるかと存じます。例えば、相談に来たスタッフが急に怒り出す、困っているはずなのに1人でしようとする、逆に自分は一切何もしない…。このような状況に「最近の若い子はSNS世代で直接のコミュニケーションが苦手だから…」と諦めておられる先生も多いのですが、世代の違いが原因ではないという話です。
スタッフの幼少期は分からないにしても、現在の姿勢から、どのようなスタイルのスタッフか知るだけでも、先生方の心理的な負担が減ると思いますので、まずはご覧下さい。

【アタッチメントスタイル(型)のタイプ一覧(諸説あり)】  

□ 自立・安定型
→ 人と安心できる関係を築けるタイプ。他人への不信感が低く助けも求めることもできる。

□ 不安定型
とらわれ型(不安・アンビバレント型)
→ 自身の幸福感は他者からの評価に依存。親密さへの過剰要求(離れるのが怖い)。極度に甘える傾向=注意を引こうとする。

拒絶・回避型(愛着軽視型)
→ 自信家。アタッチメント対象を信頼しない。ポジティブな自己イメージを保持しようとする。助けを求めず、怒りで関係を壊してしまう。

恐れ・回避型(未解決型)
→ 傷付けられるかも知れないという不安がある。拒絶された経験から助けを求められない。親密さに対し不快感があり回避する傾向。

 タイプとしては「安定型」「不安定型」に大別され、成人の約1/3(別説では1/2)が「不安定型」、つまり、スタッフの半数程度は何らかの不安定さを持ち合わせていることになりますので、対処法は知っておいた方が良いということです。

【不安定型のスタッフへの対処法とは?】
基本、クリニックでは院長がアタッチメント対象となり得ると上手くいくのですが、それを素直に表現できない不安定型スタッフへの対応をご紹介します(一般論としてご覧下さい)。

□ とらわれ型(不安・アンビバレント型)への対応
→ 見捨てない安心感を与えつつ、関係の線引きをする。(信頼しているから、ここまでは自分で頑張って)

□ 拒絶・回避型(愛着軽視型)への対応
→ 基本は任せ、相手が怒った場合こちらが怒りを抑える。(但し、事情によっては毅然とした態度を取る)

□ 恐れ・回避型(未解決型)への対応
→ 慎重に少しずつ近づくイメージ(急に距離を詰めない)。(対人に怯え=改善しなければ医療機関には不向き

 尚、読んだだけでは分からず、実際に活用したい、また、自院のスタッフで具体的に困っているので手伝って欲しい等のご希望がある先生方は、この機に、是非、ご相談下さい。

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