財務・税務戦略

“キャッシュレス納税”のすゝめ

財務VOL.183

 

今回は、国税及び地方税のキャッシュレス納付の現状と各方法の概要について解説していきます。

1.キャッシュレス納付化への動き
国税庁では、令和6年5月以降e-Taxによる電子申告を行っている法人キャッシュレス納付を行っている個人等に対し、法人税・所得税・消費税(決算分)について納付書の事前送付を取止めました。
給与の源泉所得税消費税(中間分)などについては、ひとまず従来通り送付を継続するようですが、いつまで続くかは未定です。
また、国だけでなく、県や市などの自治体においても、まばらですが法人県民税・市民税の申告書・納付書の事前送付を取止めるところが出てきています。

現在、キャッシュレス納付の普及率は国税36%、地方税31%(2022年度実績)に留まっていますが、国は2025年度までに4割を目指すとしており、おそらくは今後、紙の納付書などは順次廃止されていくことが予想されます。
また、メガバンクを含む各金融機関で不採算を理由に地方税や公共料金の窓口での取扱いの取止めが進んでいます。そのため、住民税の納付書を従来の金融機関へ持ち込んでも窓口収納を取扱っている他行への取次手数料(660円~990円程度)が必要になるようなケースが出てきています。

このような状況から、納税のキャッシュレス化は今後避けては通れない課題であると言えます。

2.国税のキャッシュレス納付
次に、各キャッシュレス納付の概要についてまとめていきます。

(1)ダイレクト納付
e-Taxで申告書等を提出した後、即時又は納付日を指定して口座引落しにより納付する方法です。

①手数料は一切かかりません
②税務署または金融機関へのダイレクト納付利用届出書提出が必要です
税理士による納付代行が可能です
令和6年4月より「自動ダイレクト」機能が追加され、給与の源泉所得税等をe-Taxで手続きする際に、「自動ダイレクト」の利用にチェックを入れることで、法定納期限に自動で口座引落しができるようになりました(別途の納付手続きが不要に)

(2)振替納税
個人「所得税」「消費税」について、口座からの自動引落しより納付する方法です(唯一、対象者と税目が限定されています)。
①手数料は一切かかりません
②金融機関または税務署へ振替依頼書の提出が必要です
一度登録すれば以降は自動引落しとなります

(3)インターネットバンキング等
e-Taxで申告書等を作成し、インターネットバンキング・モバイルバンキング(携帯用のインターネットバンキング)から納付する方法です。

①手数料はかかりませんが、金融機関によってはインターネットバンキング自体の利用手数料がかかる場合があります
②金融関係ごとに利用金額の上限があります

(4)クレジットカード納付
「国税クレジットカードお支払いサイト」からクレジットカードを利用して納付する方法です。

0.84%の決済手数料がかかります
1,000万円未満かつカード決済可能範囲内の制限があります(ただし分割納付も可能)
③カード会社からポイント還元が受けられる場合が多いようですが、前述の通り手数料がかかりますので、目安として還元率1%以上でなければ通算してお得にはなりません

(5)スマホアプリ納付
「国税スマートフォン決済専用サイト」からPay払いを利用して納付する方法です。

①手数料は一切かかりません
②PayPay、amazonPay、d払い、auPay、楽天Pay、LINEPayなどが利用可能です
1回あたり30万円の金額上限があります(分割可能ですが毎回情報を入力し直す手間がかかります)
④e-Taxで事前に申告していれば情報入力は省略できます(ただしe-Taxから操作する必要があります)
⑤Pay払いの種類とチャージ方法によってはポイント還元を受けられることもあるようです

3.地方税のキャッシュレス納付
令和5年4月より、「eL-QR(地方税統一QRコード)」の運用が開始され、各種納付書に印字されたQRコードを利用し、スマホ決済アプリでの納付が可能となっています。使用できる税金は自治体により異なりますが、固定資産税・自動車税・軽自動車税・住民税(普通徴収)にはほぼ対応しています。
特別徴収の住民税など金額が変動する可能性があるものは対象外となることが多いようです。
また、30万円以下であれば、納付書のバーコードからコンビニ納付も可能です(30万円超だとバーコードの印字がありません)。

また、eL-TAXから国税と同様にダイレクト納付インターネットバンキングクレジットカード納付を行うことも可能です(クレジットカード納付の場合は0.82~0.83%のシステム利用料が、インターネットバンキングは月額利用料がかかる場合があります)
なお、こちらはeL-TAXで申告書の作成や納付情報の入力などが必要となりますが、金額の変動に対応できるため、特別徴収の住民税や法人県民税・市民税などにも対応しています。

(※)基本的にキャッシュレス納付は領収証が発行されませんので、納付画面のスクリーンショットなどが必要となる点はご留意ください。

いかがでしょうか。各方法で長短はありますが、銀行の窓口時間に左右されなくなるスマホやパソコンがあれば完結できるなど、メリットも多く、時流的にも対応を検討するタイミングではないでしょうか。

今後、納税のキャッシュレス化を進めるための判断材料としていただければ幸いです。

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