労務・人材活性化

せっかくの信頼関係を守るために…「やるべきこと」

経営VOL.144

クライアントであるM歯科の院長先生とミーティングを行っていた際、『ウチに問題のあるスタッフがいるのです。言ったことをやらない、注意をしても聞く耳を持たないなど、反抗的な態度が目立つのです。嫌なら辞めてもらっても良いのですが、今のところ退職する気配は全くありません。辞めろと言ってしまうと、後々「不当解雇」云々とややこしいことになると聞いたので、注意はするものの、結局、放置してしまっているのですが、何とかできないでしょうか?』というご相談がありました。

そのスタッフさんは、院長先生がお困りになっている行動以外でも、早く帰りたい日は予約を入れない、院長に伝えずに(同僚にだけ伝えて)早退する等の問題行動が多いだけでなく、最近では、怒りっぽい一面が前に出るようになってきており、皆が気を遣って働いている状況ということでした。

このままでは、職場に疲れて辞めて欲しくないスタッフさんが辞めるかも知れませんし、雰囲気の悪さから患者さんも減るかも知れません。いずれにしろ、この状況はマイナスでしかありませんので、早々に対応が必要であることをお伝えしました。

【そもそも、このような状況になったのか?原因をクリアに!】
このM歯科の問題スタッフ(Aさんとします)は、入職当時は素直でやる気に満ちた優良なスタッフだったとお聞きしました。それが、いつの頃からか、院長の指示を自分では実行せず(「はい」と返事をして他のスタッフにしてもらう)、そのうち、指示そのものについても「この忙しいのに、これは何のためにやるんですか?」等、批判的な受け答えをするようになったそうで、要は、問題行動の「芽」は既に出始めていたのです。

このような態度をとるAさんを見かねて、他のスタッフが注意したところ、Aさんは聞く耳を持つどころか、ものすごい剣幕で逆に院長批判を展開し、自身の正当性を延々と主張し、周囲を沈黙させたそうで、それ以来、他のスタッフさんはAさんに対して、腫れものに触るかのような対応、つまり、誰も何も言えなくなった…ということでした。これを、周囲の同意を得たと勘違いしたAさんを誰も咎めることができず、その結果が現在の状況ということなのです。

これは、状況から、Aさんは当初は素直に院長先生の指示を聞いていたものの、何かがきっかけで(無駄が多いと思ったのか、一生懸命やっても感謝もされないので拗ねているのか…真相は不明ですが)気持ちが切れてしまったものと推察されます。また、院長批判を延々と展開できるということは、それだけ「自分は一生懸命やっていることをアピールしたい」という現れですので、本来であれば、「問題行動の芽」が出始めたときに、話し合いの機会をもつべきだったのです。

【悪貨を放置することの本当の恐ろしさ…!】
まず、問題のあるスタッフを放置するとどうなるかですが…、周囲が困り、疲れ果てて退職者が出るというのは想像に難くありません。しかし、それだけの単純な話ではないのです。
そもそも、スタッフ間では「どうしようもない」ので、雇い主である「院長」に『何とかして欲しい!』という矛先が向きます。
 院長も日々忙しいのに加え、問題職員に悩まされる訳ですからストレスが溜まります。その結果、院長はイライラをスタッフさんにぶつけてしまうことも出て来ますし、スタッフはスタッフで「院長はAさんに何も言えないくせに、こちらにばかり言う!」と穿った捉え方をし始め、結局、これまで上手くいっていた院長とスタッフ間の『信頼関係が崩壊』してしまうのです。

ちなみに、これは今回の話に限らず、院長とスタッフが抱く、お互いに対する期待値にずれが生じたときに起こることですので、普段、お互いがどのように考えているのかを話し合い、確認するミーティング等の「場」が必要だと、弊社が繰り返しレポート等でお伝えしている理由はここにあるのです。

【それでは、具体的な対応策とは…?】
まず下準備として、医院として問題と捉えている行動とは何か、困っている行動とは何かを、院長も含めてスタッフさん全員で具体的に列挙します(思い付く限り1つでも多く)。
次に、「就業規則」(未作成の医院さんは、届出義務のない10名以下でも院長の身を守るために必ず作成して下さい)に基づき、列挙した「問題行動」は、就業規則内にある「服務規程」の第何条に該当するのか照らし合わせます。そして、それは「懲戒の事由」の第何条に該当し、本来であればどのような処分(始末書・減給・出勤停止・諭旨解雇等)が適用されるのかまで整理します。

ここまで準備ができたら問題職員と面談の機会を設け、

A : どのような行動が問題なのか
B : その行動は院内ルールのどこに違反しているのか
C : 本来であれば、どのような処分が下されるのか
D : 行動を改めてくれれば、これまでのことは不問にする
E : 改めなければ、実際に処分を下す(期間1ヶ月)

ということを毅然と、淡々とお伝え頂く、要は、問題を「明確化」し、ルールに基づいた対応を粛々と行うということです。

結局、この面談を行ったAさんは、ここまで具体的、かつ明確にされたことで反論の余地がなく、たとえ不満や文句があったとしても、組織の中でやってはいけないことだったと反省し、今ではすっかり元に戻ったことをお知らせしておきます!

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