財務・税務戦略

いよいよ「定額減税」が始まります!

財務VOL.178

いよいよ来月より、所得税・住民税の「定額減税」が開始されます。
今号ではそのポイントについて、まとめて解説していきます。

1.定額減税
「定額減税」とは、読んで字の如く、令和6年分の所得税住民税について、一定額を減税する制度です。

(1)対象となる人
合計所得が1,805万円以下(給与収入なら2,000万円以下※)の居住者
※所得金額調整控除の適用がある場合は、給与収入2,015万円以下

(2)減税額
所得税住民税で、扶養の人数に応じ、次の通り減税されます。(ただし、それぞれの年税額が上限

①所得税:本人3万円+配偶者及び扶養親族1人につき3万円

②住民税:本人1万円+配偶者及び扶養親族1人につき1万円

※配偶者等は所得48万円以下(給与収入なら103万円)の居住者
年税額が定額減税枠に不足する場合、市町村より調整給付

2.実施方法
給与所得者個人事業者で減税の仕方が異なります。

(1)給与所得者
毎月の給与・賞与に係る源泉税を減額する「月次減税」と、年末調整の時点で減税する「年調減税」があり、在籍時期により、併用若しくはいずれかの方法により減税がなされます。

①月次減税
6月1日以降に支給される給与・賞与から限度額に達するまで順次減税

②年調減税
通常通りに年末調整を行い令和6年度の所得税を計算し、「年税額-減税額」「実際に徴収した税額」との差額を精算

③月次減税の対象者
月次減税の対象となるのは「令和6年6月1日時点で在籍している欄」の人だけです。これ以降の入職者は年末調整まで減税は行いません。
乙欄・丙欄についてはメインの職場で減税されるため対象外です。
ただ、ややこしいのが、上述の所得基準(1,805万円超)により対象外となる者についても月次減税は行うということです。つまり、毎月の源泉から減税したうえで、最終的に年末調整確定申告で返還することになります。
なお、任意ではないので、月次減税をしないということはできません。

④住民税(特別徴収の場合)
初月6月の徴収を0円とし、年税額から減税額を控除した残額を11等分にして、7月~翌年5月にかけて徴収されます。

(2)個人事業者(又は不動産賃貸業を営む個人)
所得税…1期2期の予定納税額から限度額まで減税 引き切れない場合は確定申告において残りを精算

住民税…限度額に達するまで各期の納税額から順次減税 ※普通徴収の給与所得者についても同様

また、公的年金の源泉税についても定額減税の適用があります。
(6月以降支給分に係る源泉税につき限度額まで順次減税)

ということで当然、人によっては給与と不動産、年金など複数の所得から重複して減税がされるケースが出てきます。そのような場合には、最終的に確定申告を行い、重複部分は返還することとなります。

3.所得税との扶養親族の扱いの違い
定額減税と所得税では、扶養親族の扱いに一部違いがあります。

(1)16歳未満の子供も減税対象
所得税では、児童手当が支給される16歳未満の子供は控除対象外ですが、定額減税では減税対象の扶養親族に含まれます。

 (2)納税者本人の所得が900万円超の場合
詳しい方はご存知かもしれませんが、納税者本人の所得が900万円を超える場合、配偶者は扶養控除等申告書に記載しません。さらに、1,000万円を超えると配偶者控除等の適用がなくなります。

しかし、定額減税では、納税者本人の所得に関係なく、配偶者の所得が48万円(給与収入103万円)以下ならは、減税対象に含めることができます。

(3)6月1日までに確認すべきこと
上述のことなどから、定額減税の実務においては、最初の減税実施までに以下の内容を確認して頂く必要があります。

令和6年に新入職された方で未だ扶養控除等申告書が未提出の方は提出を求めて減税対象となる扶養親族等の確認を行う

②既に提出されている令和6年度扶養控除申告書に、配偶者の氏名が記載されていない場合、配偶者の所得が48万円以下(給与収入103万円以下)の見込みの場合は申請してもらう

③令和6年度以降に新たにお子様が生まれた場合には申請してもらう

④既に提出されている令和6年度扶養控除申告書に記載されている控除対象扶養親族で、就職その他の理由等で今年の所得が48万円(給与収入103万円)を超える見込みの方はその旨報告してもらう

※②③については今回の減税手続きのために新たに用意された「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」に記入の上、提出してもらって下さい。 

4.調整給付
年間の税額」が「定額減税の枠」を下回る場合に生じる「控除しきれない部分」について、市町村から調整給付が行われます。
税額の多寡によって不公平を生じさせないための措置です(なら全て給付にした方が早い気がしますが)。

(1)調整給付額
不足見込額が1万円単位(千円未満切上げ)で支給されます。
なお、昨年より労働時間を増やしたなどの理由で過給付となった場合も、原則、返還は求めないこととされています(現状)。逆に給付額に不足が生じた場合には、令和7年に追加給付が行われます。
そもそも所得税・住民税(所得割)が発生しない方については、調整給付はありません。

(2)手続き
前年(令和5年)の給与等の実績を元に、不足が生じる見込みの方に対し、各市町村から、次の事項について「確認書」が送られてきます。
・本人確認
・給付先口座の確認

上記事項についての必要事項を記入、若しくは必要書類の写しを添付して市町村へ返送することとなります(名称やフォーマット、内容は市町村によって多少異なります)。なお、既にマイナンバーによる公金受取口座を登録されている場合には、通知ハガキのみ発送される場合もあるようです。

自治体によって時期は前後するようですが、概ね6月~8月の間に発送・給付が行われる見込みです。

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