労務・人材活性化

「労務コンプライアンス」の整備が定着には必須です!

経営VOL.190

ご存知の通り、この4月から『改正育児介護休業法』が施行されるため、順次クライアントさんに案内しているのですが、最近、新たなクライアントとなった20代から60代までの職員を抱えるB医院の院長から『今後、働く人口も減るし、雇用の流動化も進むでしょうから、今いるスタッフを大切にするためにも、また無用な争いごとを避けるためにも法律は守るつもりですが、この分野における「事業主の“義務”」が余りにも増えて、もう付いていけないのでサポート願えませんか』とのお申し出を受けましたので、お引き受けさせて頂きました。

確かに、雇用主の労務コンプライアンスは多岐に渡り、労働者保護を目的とした労働基準法を基に、きちんとした労働契約の締結に始まり、労働条件の明示(これも昨年の4月に様式が変更されました)、残業をさせない、させる場合は36協定が必要、賃金は間違いなく支払い(最低賃金・同一労働同一賃金にも留意が必要です)有給は取得させなければならない(働き方改革で該当者は年間5日の義務が課されました)という労働環境だけでなく、労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対応、そして、今回改訂された育児介護休業法に基づく育児者、介護者への配慮だけでなく、育児と仕事の両立、また介護離職を防ぐために個別の意向聴取やその対応策も義務付けられ、加えて、ハラスメント関連法に基づき、セクハラパワハラだけでなくマタハラ等の対策も義務化されただけでなく、カスハラ(カスタマーハラスメント)への対応(今は「望ましい」とされていますが、将来的には義務化と思われます)等、枚挙に暇がありません。

ただでさえクリニック経営を取り巻く環境は厳しく、今まで以上に経営に集中しなければならない中、手が回らないからと“おざなり”に出来る分野ではなく、スタッフも年々知識を蓄えシビアな対応を迫る事例も増えており、いい加減な対応をすることで余計な出費が必要になったり、従業員からの訴えで労基署の調査を受けたりすることも少なくありません。
また、労務対応をしっかりしてこそ、リファラル採用(従業員のネットワークを使う手法)やカムバック採用(結婚・出産等で退職したスタッフの再雇用)、アルムナイ採用(その他、過去の退職者の再雇用)という道も開けるので(このようなルートがないと採用コストは増える一方です)、他人の手を借りてでもきちんとしたいという院長のご判断は賢明と思われます。
過去、レポート誌上にて「サポートが必要であればご用命下さい」とお伝えしておりましたが、今号では、サポートの依頼を受けた弊社がどのような業務を行うのかご紹介いたします。     

【まずは、コンプライアンス状況を徹底的に確認します!】
労務対応に於いて最重要なのがコンプライアンスですので、まず、現状どのような状態かチェックしました(↓)。

□    就業規則の有無(提出義務の有無も含め)
□    「有」の場合:絶対的記載事項の確認、及びそれ以外の諸規程も含め現行法に対応しているかの確認
  (育児介護休業規程/ハラスメント対策状況)
□    労働契約書(労働条件通知書)の確認(法違反の有無、現行法に則した絶対的記載事項の確認)
□    給与の確認(始業時間・終業時間、残業手当の確認、雇用保険・社会保険等、該当者漏れの有無)
□    給与体系・最低賃金・同一労働同一賃金の確認
□    スタッフの把握(源泉徴収簿)年齢・家族構成、入職年月日及び有給休暇残日数・取得状況等
□    その他、これまでにあったトラブルのヒアリング 等

 
 【次に、不足している対応・不備を1つ1つ解決します!】
確認した結果、B医院には就業規則はあるものの内容が古く、現行法に対応していなかったため、この4月だけでなく10月にも改正される育児介護休業規程も含めて整備し、ハラスメント関連法にも対応、労働条件通知書も最新の仕様に変更、残業があるにも関わらず36協定が未提出だったため早々に作成、加えて、改正育児介護休業法に基づく「個別の意向聴取」対象者を確認し、時期が到来した際に面談する段取りも整え、有給休暇の取得状況、雇用保険・社会保険の過不足、賃金体系も確認しました。

【そして、スタッフの皆さんに院長の意図を丁寧に説明!】
そして、ここが重要だったのですが、全体会議で院長から「今後、皆さんのためにB医院は労働環境をきちんとする」と宣言、それに伴って改訂した就業規則や各種規程、36協定の件等を説明し、加えて先行して「カスハラ」対応にも言及し、医院はスタッフを守るという姿勢を示しました。この一連の業務により、院長に「言っても仕方ない」と半ば諦めていた中、今回、院長が本腰を入れてくれたことに「モヤモヤしていたことがクリアになり、安心して働けるようになった」と非常に喜んでいました。
4月には改正育児介護休業法の対応として、就業規則の改訂が必要なことも含め、弊社にてサポートメニューを作成いたしましたので、是非HPでご確認頂きご用命下さい。

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