財務・税務戦略

『ダイレクト納付』を利用した納税手続きについて(国税編)

財務VOL.137

最近、税務署から「国税の納付は“ダイレクト納付”をご利用ください」という案内が送られてくることが多くなりました。その中で従前と比較して電子証明書の添付(取得)やICカードリーダー等が不要になり、手続きが簡単になった点が強調されており、毎月の源泉所得税の納付での利用が推奨されています。

確かに手続きは簡素化されており、導入準備は多少の手間を要しますが、慣れてしまえば簡単に納付手続きを電子で行うことが可能で、以下のようなメリットがあります。

□ 銀行に行く必要がない
□ インターネットバンキングの契約が不要
□ 手数料が無料
□ 即日納付に加えて期日指定納付が可能

今号においては、主に毎月10日納期限の源泉所得税の支払いを電子で納付することを念頭に、「ダイレクト納付」の導入と納税手続きの手順についてイメージし易いよう解説いたします。


1.e-Tax「ダイレクト納付」利用までの準備作業
以下は、既に電子申告(e-Tax)を利用可能な状況が前提です。

(1)「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書」の所轄税務署への提出
口座振替の預貯金口座を記載、届出印を押印しての提出になるため、紙面での書類提出になります。複数口座を登録し、引落の都度、支払口座の選択が可能です。その場合は登録銀行の数だけ、同じ書類を提出します。

・書類の提出から利用開始まで1ヶ月程度かかります。

(2)利用するパソコン上での事前準備
・申告業務は税理士が行う前提ですので、申告業務を行う「e-Taxソフト(共通プログラム)」をインストールする必要はありません。「e-Taxソフト(WEB版)」を利用します。

・国税庁のホームページ「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」から「電子納税」⇒「サイトマップ」⇒「各種ソフト・コーナー」⇒「WEB型ソフト・コーナー」⇒「e-Taxソフト(WEB版)を利用するに当たって」を選択し、「1,利用規約の確認」「2,利用環境の確認」「4,事前準備セットアップ」の作業を行って下さい(「3,電子証明書の取得」の手続きは不要です)。

・同じく「7,利用する」の「e-Taxソフト(WEB版)を利用する」から「ログイン」を実行し(※)「利用者情報の登録」を行って下さい(電子証明書の登録作業は省略して下さい)。
(※)「利用者識別番号」「暗証番号」は顧問税理士に要確認

なお、上記の過程はe-Taxヘルプデスク(0570-01-5901)に電話を繋いで行うとスムーズに作業できます。

(3)「ダイレクト納付利用可能のお知らせ」の確認
・税務署、金融機関の登録作業が終了するとe-Taxのメーセッジボックスに「登録完了のメッセージ」が格納され、ダイレクト納付の利用が可能となります。下記の手順で確認を行って下さい。

・「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」から「電子納税」⇒「サイトマップ」⇒「目的から探す」⇒「メッセージボックスの確認」⇒「e-Taxソフト(WEB版)のログイン」⇒「メッセージボックの確認」

2.源泉所得税の納税手続(毎月納付の場合) 
源泉所得税の具体的な納税の流れは下記のとおりです。

・「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」から「電子納税」⇒「サイトマップ」⇒「目的から探す」⇒「ダイレクト納付による納税手続」⇒「e-Taxソフト(WEB版)を利用する」⇒「ログイン」

「申告・申請・納税」⇒「新規作成」⇒「徴収高計算書を提出する」⇒「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般)」を選択します。

それ以降の流れは下記の通りです。

① データ送信先の税務署確認
② 「納期等の区分」入力(令和○年○月分)

③ 「区分」の入力(給料,賞与,退職手当,税理士報酬等々)
④ 支払年月日・人員・支給額・税額の入力
⇒ 税理士が作成した源泉納付書の記入部分をすべて入力するイメージです。入力後、源泉の納付書と同じレイアウトの確認画面にて入力内容の確認・訂正を行います。

⑤ 受付システムへの「送信」⇒「即時通知」の確認
⑥ 「受信通知(納付区分番号通知)」の確認
⑦ ⑥の内容に基づく「ダイレクト納付」の指示・実行
⇒ 「即日納付」か「指定日納付」かを選択し、後者の場合納付日の指定も行う。引落口座も選択の上、最終実行。

⑧ 「納付完了」の確認
⇒ メインメニューの「送信結果・お知らせ」から「メッセージボックス一覧」に「ダイレクト納付完了通知」を確認し手続終了。

※ メールアドレスを登録していれば、メーセージボックスに納付状況のお知らせメールが送信されます。

3.源泉所得税以外の納税手続について
上記2.において「ダイレクト納付」を利用した「源泉所得税の納付手順」について解説しましたが、「ダイレクト納付」は「所得税」「法人税」「消費税」「相続税」「贈与税」等、メインとなる税金についてはほとんど漏れなく対応が可能となっています。

これらの税金については通常、税理士が電子申告にてあらかじめ申告書を提出しているため、上記2.の源泉所得税の納税手順で言いますと、”①~⑤”までの税額確定・報告の過程を既に税理士が行っていることになり、納税者自身が行う納税手続きとしては、税理士が申告をした後、「メッセージボックス」を確認して「納付区分番号通知」の内容を確認し「ダイレクト納付」を実行する、という残りの“⑥~⑧”の作業を実行するだけで至って簡単に納税手続きを済ませることが可能です。

また、いったん「ダイレクト納付」を選択すると、納税は電子で行うという意思表示となり、以後は法人税、消費税等一切の税金の納付書が税務署から届かなくなりますので、源泉所得税以外の税金についても電子納付の利用をご検討ください。

次号においては、eLTAX(エルタックス:地方税共通納税システム)を利用した地方税の「ダイレクト納付」についても、合わせてご紹介させて頂く予定です。

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