労務・人材活性化

今年こそ“やろう”と思って“やらない”自分と決別を!

経営VOL.188

早いもので、今年も数日を残すところとなってしまいましたが、皆さんにとって2024年はどのような年でしたでしょうか。一昨年前は「ジャネの法則を打ち破ろう」と題し、2024年がいつものように「早かった」で終わらないよう、年内に時間を取って「やりたいこと」を明確にし、また、2024年は色々な大きな動きがあり、2025年問題も控えている年であったことから、「クロスSWOT分析」を紹介し、それを踏まえ環境の変化に対する「感度」を上げ、「見識」を高めるとともに「考察」「行動」するという「4K」の実践をお勧めしました。つまり、一昨年も昨年も「外部環境の動向を確認しながらクリニックのことを考える時間を取って下さい」ということをお伝えしたのですが、改めて今年を振り返って、いかがでしたでしょうか。 

【結局、多くの人が同じような1年を過ごしてしまったのは?】
この「4K」のお話ですが、今月、年末のご挨拶方々何人かの先生方にお聞きしたところ、「結局、何やかんやと忙しくて…」と、結局、例年と同じような1年を過ごしたというお話が多かったのですが、これは『時間管理マトリックス』における第一領域である『緊急かつ重要なこと』、或いは第三領域である『緊急ではあるが重要ではないこと』に時間を取られ、最も重要な第二領域である『緊急ではないが重要なこと』に時間を割けなかった、或いは割かなかったということです。もちろん、「時間は作るもの」であり、どれだけ忙しくても、作ろうと思えば作れますが、今号はその時間を作る話ではなく、そもそも、「なぜ、大事と分かっていても時間を作らないのか(作ろうとしないのか)」という根本についてお話をさせて頂き、是非、新年を迎える参考にして頂きたいと思います。

【理由①:人間は、「興味」「好奇心」がないと動かない!】
まず、大事なことと分かっていながら、それを実行に移さないのは、本心から「大事なこと」と思っていない、或いは目の前の「やるべきこと」に比べて「優先順位が低い」、そして何より、「これは自院にどのような影響があるのだろうか」という疑問・興味がない、つまり、「知りたい」と思っていないのです。
本来、人間には「既に知っていること(既知)」と「知りたいこと(未知)」のギャップに対し「好奇心」が生まれるのですが、人生経験を積むと、自分は「知っている」「分かっている」と思うことが増えて「既知」と「未知」のギャップが狭くなり、それに伴って好奇心も失われてしまうのです。
これは『確信エピデミック』という現象で、近年は特に顕著なのですが、インターネットやSNSによる情報過多により、情報の真偽も確かめずに確信を持つ(知ったつもりになる)のも一因といわれています。

【理由②:必要な情報だけ切り取るので見識が広がらない】
次に、「デジタルネイティブ世代(1980年代後半生~)は当然のこと、アナログからデジタルの移行期間に生まれた世代(ジェネレーションX:1965年~1980年頃生)、さらに、その前の世代でも一定数の人は、その便利さから「検索して必要な回答だけを切り取る」行動様式になりました。その結果、それ以上に見識が広がらない、つまり、セレンディピティ(何かを探していて、その探しているものとは別の価値あるものを見つける能力や才能)が衰え、情報は「処理するもの」として、興味を持つどころか「消去される対象」になってしまっていることも理由として挙げられます。

【理由③:「へぇ~、そうなのか」で終わってしまっている!】
加えて、基本、消去される情報でも自分自身の「興味」から調べたことで「へぇ~、そうなのか」と印象に残るものもあると思います。しかし、頭に残っていたとしてもその後、何もしなければ、『エビングハウスの忘却曲線』によれば、1時間後には56%を忘れ、1日後には74%忘れてしまう、つまり、復習しなければ2~3日も経てば何も残らないため、結局、復習しない限り「消去される対象」に変わりないのです。

【理由④:基本的に、「自分には関係ない」と思いたい!】
最後に、薄々は大事だと分かっていながらも、それを避けて通りたい心理として、「ウチは順調なので関係ない(このレポートは経営が苦しいクリニック向けだから)」「この情報がウチには必要ない(この情報は他業種向けだから)」というように、自分には無関係と認識し、心の中の矛盾や不快感を解消しようとする『認知的不協和』、無関係と信じ精神的負担を軽減する『自己保護』、或いは「何とかなる」と信じポジティブな感情を維持する『楽観主義』等が作用していることも多くあります。
しかし、これらが作用したまま全てを避けていると、後々、取り返しのつかないことになってしまいます。

【本年もお世話になりました。ご用命あれば是非ご連絡を】 
今号にて、敢えて学術的な内容を多く用いたのは「行動に移さない(移せない)のは学術的な理由がある」こと、もし思い当たる節があるなら、ご自身は理由①~④のいずれに該当するのか今年の最後に考えて頂きたかったからです。そして、今号を踏まえ、今年こそは改めてクリニックを取り巻く内外環境の変化を捉え、来年はどうするのか考え、仕事始めの日に発表できるようご準備頂ければ幸甚です。 もし、お手伝いが必要であれば、是非、ご連絡下さい。

PDFダウンロード