不動産には、あらゆる場面で税金がついて回ります。
今回はその中でも、「取得」・「保有」・「売却」に関わる税金で、頻出のものについて解説して参ります。
1.取得時に関わる税金 =登録免許税/不動産取得税
(1)登録免許税
取得した土地や建物を登記する際に国に収める税金です。
土地又は建物の「固定資産税評価額」に下表の税率を乗じた税額が課せられます。
金融機関での現金納付、又はオンライン申請でのネットバンキングが可能ですが、一般的には司法書士に依頼して報酬と同時に支払われることが多いです。
土地 |
売買 | 相続 | 贈与 | |
2%(※) | 0.4% | 2% | ||
建物 |
新築 | 売買 | 相続 | 贈与 |
0.4% | 2% | 0.4% | 2% |
(※売買で取得した土地の税率は、令和8年3月31日までは1.5%に軽減されています)
「固定資産税評価額」とは 固定資産税の計算の基礎となる税法上の不動産の評価額です。 登録免許税や不動産取得税などの税額計算にも用いられます。 「土地」は公示地価の70%、「建物」は工事金額の50%~70% 若しくは再建築価額の70%程度の評価額になります。 |
自己の居住用で取得後1年以内に登記を行った等、所定の要件を満たした住宅用の建物の税率は、新築なら0.15%、売買なら0.3%に軽減され、また認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合には0.1%まで軽減がされます。
なお、相続による取得についても、今年の4月1日より不動産の相続登記が義務化されましたので、留意が必要です。
また、相続により設定した配偶者居住権について登記をする場合、0.2%の登録免許税が課せられます。
(2)不動産取得税
不動産を購入、新築、贈与などにより取得した際に都道府県に収める地方税(相続による取得は対象外)で、取得後3ヶ月~1年くらいの間に自治体から送られてくる「納税通知書」によって納付します(令和5年4月以降は、スマホアプリ納付も可能に)。
納期限は納税通知書の送付から60日が一般的です(20~30日の自治体もあります)。税額は不動産の「固定資産税評価額」に下表の税率を乗じて算出されます。
土地 |
建物 | ||
住宅 | 住宅以外 | ||
令和9年3月31日まで | 3% | 3% | 4% |
令和9年4月1日以降 | 4% | 4% | 4% |
住宅用の土地については令和9年3月31日までは税額が1/2に軽減されています。
また、土地の1㎡当たりの価額✕住宅の床面積の2倍(上限200㎡)✕税率まで軽減措置もあります(つまり土地の面積が建物の床面積の2倍以下なら200㎡まで実質非課税)。
また、住宅を新築した場合、最高1,200万円を評価額から控除する特例も各自治体により定められています。
2.保有に関わる税金 =固定資産税
その年1月1日において保有している土地・建物に対して、市町村から固定資産税が課されます。
こちらも多くの市町村でスマホアプリ納付などキャッシュレス化が進んでおり、5月頃に市町村から送られてくる納税通知書によって、一括又は年4回の分割により納付します。
税率は基本的に1.4%ですが、最終的な決定は自治体に委ねられているため、1.4%を超える自治体も稀にあります。
また、都市計画区域内にある土地・建物については、都市計画税0.3%(最大)が併せて課されることになります。
なお、住宅用の土地については200㎡以下の場合には1/6、200㎡を超える場合にも1/3まで税額が軽減されます。
逆説的に、建物を取り壊すと土地部分の固定資産税が最大6倍に上がってしまうため、空き家問題の一因になったりもしています。
3.売却時に関わる税金 =所得税・住民税
土地や建物を売却すると、譲渡所得に対して所得税・住民税が課されます。
売却した年の翌年3月15日までに、他の所得と併せて確定申告を行うこととなりますが、計算上は給与や事業の所得とは分け、不動産の譲渡所得のみで税額を計算(分離課税)し、他の所得の税額と合計した額がその年の所得税額となります。
なお、譲渡損失が生じていても、原則として他の所得と通算することはできず、また翌年以降に繰り越すこともできません(一部特例あり)。
譲渡所得の税率は保有期間が5年を超えているか否かで分かれ、5年超の場合は所得税15%+住民税5%、5年以内の場合は所得税30%+住民税9%となります(なお、5年経過の判定は売却年度の1月1日時点で判断します)。
譲渡所得の計算は、「譲渡価額」から「取得費(減価償却後)」「譲渡費用」を差し引いて計算し、また一定の要件を満たす場合には「特別控除額」を控除することができます。
よく使われる「特別控除」を抜粋すると、
①マイホームを売却した場合:最大3,000万円
・自分が住んでいる家(若しくは家と敷地)を売る
・売手と買手に、親子や夫婦などの特別な関係性がない
・売った年の前年又は前々年にこの特例の適用を受けていない
②相続した空き家を売却した場合:最大3,000万円
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋である
・区分所有登記がされていない
・相続開始直前に被相続人以外が居住していなかった
などがあります(なお、複数の特例を併用する場合は合計で5,000万円が上限です)。
さらに、①のマイホームを売却した場合について、更に所有期間が10年超だった場合には、6,000万円以下の譲渡所得に対する税率が所得税10%+住民税4%にまで軽減されます(6,000万円超の部分は所得税15%+住民税5%)。