労務・人材活性化

今、流行の「スポットワーカー」を使う準備を!

経営VOL.184

前回のレポートでは、人材不足の昨今、雇用の流動化が進む中、今までの常識では考えられないようなことをするスタッフも増えていますが、それを拒否するだけでは立ち行かなくなるので、ダイバーシティ(多様性)の時代と割り切り、その異なる価値観を理解するよう努めて付き合っていきましょうというお話をさせて頂きましたが、その後、いかがでしょうか。

毎回、レポートを配信した後、感想を送って頂く先生方が少なからずおられるのですが、前回の記事については、概ね「言っていることは分かるが、なかなか、実際には難しい…」「自分にはできない」という意見が多く見受けられました。もちろん、これまでの価値観を一旦横に置き、異なる価値観を理解し、受け入れようとする訳ですので相当なストレスになりますし、一朝一夕にできるものではありません。あくまで、時代に則した対応・考え方をしていきましょうということであり、少しずつでも良いので続けることが重要なのです。

【『スキマ時間』を有効活用したい人が増殖中!!】
先述した「多様性」というワードは「働き方」についても「多様な働き方」という形で表現され、働き方改革の一環として、特にコロナ禍で加速しました。「リモートワーク」「ギグワーク」「ジョブ型」「フリーランス」等、実に様々な働き方が市民権を得たことにより、「定職に就く」「会社に行って働く」のが当然とされた価値観は崩れたと言って過言ではありません。そして、さらに最近では「スキマ時間勤務(スポットワーク)」という、自分の都合の良い時間や働きたい時間だけ勤務するという働き方が、Z世代を中心に増え始め、今では、副業を推進している企業の社員や主婦層、シニア層にも広がっており、メルカリの発表資料によれば、今やスポットワーク登録者は2,200万人を超えているとのことです。

企業としても、概ね業種を問わず「繁忙時間」があり、以前より「この時間に、もう1人いれば」というニーズはありましたが、その時間のためだけに1人を採用するという不便さ(繁忙時間以外は人員が過剰になる等)、また、ただでさえ労働力不足の昨今、そのように都合の良い人も見つからないことから、結局、在籍している社員がオーバーワークをして乗り切るしかありませんでした(これが企業のブラック化を促進し過労死に繋がるという負の連鎖でした)。
しかし、このスポットワークは、人手が欲しい企業と働きたい人のニーズが合致し、上手くマッチングできれば繰り返し来てもらえるメリットもあるので、今後、ますます市場は拡大すると言われています。

現在、スポットワークを登録するサイトを運営する企業はスタートアップのタイミーに続き、パーソルやLINEヤフー、メルカリも参入、タウンワークも参入予定と増加の一途を辿っており、まだ、飲食や配送、倉庫等の案件が多いのですが、医療・介護業界の案件も出始めているといった状況です。

【スポットワーカーを受け入れる準備をしておく必要性】
この市場の流れからすると、早晩、クリニックのスポットワークが当たり前になることが考えられますので、それに対する「準備」は今から始めて早過ぎることはありません。それでは、どのような準備が必要なのか、下記をご覧下さい(↓)

《ハード面》
① 自院の忙しさについての考察、整理→ 時間帯、曜日、天気、季節等 (いつ、どのようなときに忙しくなるのかの把握)
② スポットワーカーを受け入れた場合の業務を洗い出し→ 何をやってもらうと既存スタッフは助かるのかを整理
③ 洗い出した業務の「マニュアル化」→ 誰が見ても分かる(それを見ればできる)ように
※教える人が付かなければいけないようであれば、スポットワーカーを使う意味がない。

《ソフト面》
① 医院全体で「割り切る」「期待しない」姿勢の共有 → お願いした業務だけきちんとやってくれたらOK   (パーソナリティは二の次 → コマとして割り切る)
② スポットワーカーの勤務時間を管理する体制づくり → 「きちんとした医院」を証明=次につながるように    (約束の時間以上働かせないように気を付ける)

  つまり、人が来ない、続かない、何を考えているか分からない現状に「多様性の時代なので割り切りましょう」と、前回より申し上げておりましたが、スポットワーカーに対しては、これ以上に割り切る気持ちが必要ということ、なおかつ、自院をスポットワーク先に選んでもらうために、やる仕事を明確にし、時間はきっちり管理し、面倒なことは言わない(やることさえやれば何も言わない)という体制が必要ということです。

前回・今回と、現在、皆様が悩んでおられる人材問題について違う視点で検証しました。是非、参考にして下さい。

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