労務・人材活性化

2024年はリスクマネジメントから始めてみませんか

経営VOL.178

ご存知の通り、2024年は元旦に起こった「能登半島地震」で始まり、翌2日には「羽田空港衝突事故」が発生、さらに3日には北九州で焼損面積が約3,000㎡の大火事が起こり…、その後、旧田中角栄邸も燃えてしまいました。 前回は、今年以降の大小さまざまな変革に備え、じっくり時間を取って真剣に経営のことや将来のことを考えるようにお勧めしましたが、ここまで立て続けに事故や災害が起こった年始も珍しいので、今回は、上述のような年の始まりを受け、まず、経営の足元を見直す意味でも、クリニック経営における非常時への備えについて考えてみたいと思います。 

【考え出すとキリがないから「考えない」「備えない」はNG!】
ある日突然、診療中に大きな地震が発生した場合、院長自身だけでなく患者さんやスタッフに落ち着いて「命を守る行動」を促すことが何より重要です。しかし、普段、頭で分かっていながら、また、何となくイメージはしていながらも、喫緊の課題という意識がないため、結局、現時点において、何も対策をされていないクリニックさんが多いのではないでしょうか。
大きな地震が起こった場合、具体的にどのように対応すれば良いのか、スタッフや患者さんにどのような指示を出せば良いのか、避難経路は確保できているのか、通信手段は大丈夫か、非常時に発電するものがあるのか、患者情報のバックアップは、損壊に対して保険は出るのか…等々、少し考えるだけでも、かなりの対策が必要であることが分かります。
また、このような自然災害に限らず、火災や突発的な事故の他、今も脅威が続くランサムウェアや医療訴訟等、事業継続を妨げるリスクに対する備えは必要なのですが、考え出すとキリがありませんし、忙しい日常の中で「起こるかも知れない可能性」に対し、どのように備えれば良いのでしょうか。

このお話をした際、『そうなったらなったで、その時に考える』『今、考えても仕方ない』と仰る先生も少なくないのですが、備えていれば救えた命、守れた資産、事業の継続があるのも事実ですので、やはり、取り組んでおかなければいけません。そこで、今回は、これらのリスクを体系的にまとめることができる、災害拠点病院だけでなく、今年の4月から介護施設にも義務化された、2011年の東日本大震災をきっかけに注目を集めている『BCP(Business Continuity Planning、いわゆる『事業継続計画』をご紹介させて頂きます。

【クリニックは義務ではないですが、リスクマネジメントに!】
このBCPは単なる防災対策ではなく、あくまであらゆるリスクを想定し、危機的な状況に陥った際、早期に原状回復する『事業の継続』を目的とした方策をまとめたもので、これを完成させることでリスクマネジメントが可能となります。
もちろん、専門家も交えて詳細に話し合えば、より漏れのない立派なものができるかも知れませんが、イザという時に使えなければ意味がなく、全員が当事者意識を持たなければ使えませんので、院長だけで考えるのではなくスタッフと話し合い、まずは「作成する」ことから始めて頂ければと存じます。

尚、最初から完璧なものを作る必要はなく、まずは作成し、その後、日々の診療時に気付いたことや漏れていたこと等を追加しながら、クリニック全体としての意識を高め、徐々に全員で良いものを仕上げていくという感覚で良いかと存じます。

【ミーティングを開催し、順を追ってやってみましょう!】
それでは、BCPの作成に取り掛かって頂きたいのですが「ミーティングするにしても、何から手を付ければ良いか分からない」と思われますので、以下に簡単な手順をお示しました。

是非、ご参考にして頂ければ幸甚です。

尚、今回は、あらゆるリスクの中でも、今号を執筆する契機となった「自然災害」に絞ってご案内させて頂きます(↓)

① リスクの洗い出し
⇒地震や風水害に見舞われた場合、どのようなリスクがあるのか、思い付くまま全員で出します。

② 優先順位をつける
⇒洗い出したリスクの中で対策が必要な順に並べます。もちろん、命に関わることが最優先ですが、その次は「事業を継続するために必要なこと」です。

③ 実現可能な対策を決める
⇒例えば、命を守る対策として、ハザードマップの確認や避難経路の確保、患者の誘導方法、避難場所の確認や緊急連絡先の整備、事業継続の対策として水道・電気等インフラの復旧対応、患者データの確保等。

上記は一例であり、全員で考えるともっと多くの項目が出て来ると思います。また、厚生労働省のサイトにも分かりやすい手引きが掲載されていますので、是非、取り組んで頂き、万一に備えた安心経営で今年を乗り切っていきましょう。

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