先月22日、令和5年の公示地価が国交省より発表されました。
今号では、この「公示地価」と、同じく不動産関連のトピックから「空き家特例」及び「相続土地の国庫帰属制度」について併せて解説をしていきます。
1.令和5年公示地価
去る3月22日、令和5年の公示地価が発表されました。(単位%)
全用途平均 | 住宅地 | 商業地 | |||||
R4年 | R5年 | R4年 | R5年 | R4年 | R5年 | ||
全国 | 0.6 | 1.6 | 0.5 | 1.4 | 0.4 | 1.8 | |
三大都市圏 | 0.7 | 2.1 | 0.5 | 1.7 | 0.7 | 2.9 | |
東京圏 | 0.8 | 2.4 | 0.6 | 2.1 | 0.7 | 3.0 | |
大阪圏 | 0.2 | 1.2 | 0.1 | 0.7 | 0.0 | 2.3 | |
名古屋圏 | 1.2 | 2.6 | 1.0 | 2.3 | 1.7 | 3.4 | |
地方圏 | 0.5 | 1.2 | 0.5 | 1.2 | 0.2 | 1.0 | |
地方四市 | 5.8 | 8.5 | 5.8 | 8.6 | 5.7 | 8.1 | |
その他 | ▲0.1 | 0.4 | ▲0.1 | 0.4 | ▲0.5 | 0.1 |
≪動向≫
(1)全国
全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました(全用途平均の1.6%は15年ぶりの高水準)
(2)三大都市圏
全用途平均・住宅地は、東京圏、大阪圏、名古屋圏のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。
商業地は東京圏、名古屋圏が2年連続で上昇、上昇率が拡大するとともに、大阪圏も3年ぶりに上昇に転じました。
(3)地方圏
全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。
地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも10年連続で上昇し、特に上昇率が伸びています。
その他の地域では、全用途平均・商業地は3年ぶり、住宅地は28年ぶりに上昇に転じました。
国交省は、ウィズコロナの下で、景気が緩やかに持ち直している中、都市部を中心に上昇が継続、地方においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となった、としています。
【住宅地】
都市中心部や生活利便性に優れた地域で、低金利環境の継続、住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあり、住宅需要が堅調であったこと、また、リモートワークの浸透など生活スタイルの変化によるニーズの多様化により、郊外部にも上昇範囲が拡大しました。
【商業地】
都市部を中心に店舗需要が回復傾向にあり、また、堅調なオフィス需要やマンション用地需要等から地価の回復傾向がより進みました。
観光地や繁華街でも、「全国旅行支援」を追い風に増加した国内旅行客や、昨年10月の入国制限緩和による訪日外国人客(インバウンド)の戻りにより、地価が上昇に転じる動きが目立っています。
地価の回復に伴い、今後の相続・贈与の土地評価に係る「路線価」や、固定資産税の上昇が予想されます。
2.空き家特例の延長と改正
相続又は遺贈により取得した空き家(及び敷地)を譲渡した場合の所得税の特別控除の特例について、適用期限が今年の12月末に迫っていましたが、令和5年度税制改正により、内容の一部改正と共に、令和9年12月31日まで4年の期限延長となりました。
この規定は、①昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋で、②相続開始直前において、被相続人以外に居住者がいなかったもの(マンションなど区分所有建物は除く)を、耐震リフォームをして譲渡するか、取壊して更地にして譲渡することで、譲渡所得の金額から最大3,000万円まで控除することができるというものです。今回、期間の延長と共に、下記の通り改正が行われました。
(1)これまで、譲渡前に売主側が行わなければならなかった耐震リフォーム又は家屋の取壊しを、譲渡後に、買主側で行うことができるようにする(譲渡の翌年2月15日までに)
(2)空き家を3人以上の相続人で取得した場合、1人当たりの控除額を最大2,000万円とする(特別控除目的で複数人による遺産分割を行うケースへの対応)
どちらも、延長後の期間である令和6年1月以降の譲渡について適用されます。
3.相続した土地の国庫帰属制度
「相続土地の国庫帰属制度」とは、相続により取得した不要な土地の所有権を国に返還することができる制度で、今月27日より施行されます。
この制度のメリットは、
(1)引き取り手を探す必要がなくなる
(2)農地や山林も対象
(3)要件を満たせば国が必ず引き取ってくれる、といった点です。
適用を受けるには、法務大臣(法務局)へ承認申請を行い、要件審査を経て法務大臣(法務局)の承認を受ける必要があります。
対象となる土地は上に建物等のない更地に限定され、次の場合には申請が却下されます。
①境界が明らかでない、②担保権等が設定されている、③土壌汚染地、④通路などで他人の使用が予定される(※山林は制度対象ではあるものの、境界が曖昧な場合が多いため適用は困難となることが予想されます。)
また、除去が必要な有体物が地下にある場合など、個別のケースによっては、不承認処分が下される場合もあります。なお、承認後に帰属を行うためには、その土地の10年分の土地管理費相当額の負担金を納付しなければなりません。
管理費相当額は土地の区分や面積によって異なりますが、宅地なら原則は20万円、市街化区域 (市街地)や用途地域(住居・商業など利用目的の定められた地域)では200㎡で約80万円となります。加えて、金額は未定ですが、別途、法務局に審査手数料の支払いが必要となります。
上述の通り、適用のハードルは高めの制度ですが、不要な土地について毎年の固定資産税を払い続ける必要がなくなることや、子や孫の世代の負担となる可能性を排除できることを考慮すれば、選択肢の一つとして検討する価値はあるかもしれません。