労務・人材活性化

健全経営のために『パワハラ』を正しく理解 ①

経営VOL.159

世間でも大きく取り上げられていることから、皆様もご存知かとは思いますが、令和4年4月1日から全ての事業所を対象として『パワハラ防止法』が義務化されました。しかし、「そもそも“パワハラ防止法”とは何か?」、そして、「何が義務化されて、自院で何をすれは良いのか?」、という先生方が多く、また、「最近、何か言うと、すぐ“パワハラ”と言われるから何も言えない…」とお困りの先生方も多いことから、今号では、むやみにパワハラと言われることを警戒するのではなく、必要なことはきちんと伝えられる健全経営に活用して頂くため、まずは法律の基本及びパワハラの「正しい定義」「具体的内容」をお伝えさせて頂きたいと思います。

【そもそも、「パワハラ防止法」とは…?】
まず、「パワハラ防止法」の正式な名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」、略称が「労働施策総合推進法」であり、この中に、パワハラ防止に関する規定が盛り込まれたことにより「パワハラ防止法」と呼ばれており、法律名からも分かる通り、パワハラを防ぐことにより、「雇用の安定」「職業生活の充実」を目指していることが分かります。 

【全企業に「義務化」されたこととは…?】
次に、「何が義務化されたのか?」ですが、その内容は以下の条文に記載されていますので、まずご覧下さい(↓)。 

《労働施策総合推進法(第30条2)》事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 

つまり、「雇用の安定」と「職業生活の充実」のため、全企業は令和4年4月1日から、ハラスメントについて以下の対応が義務付けられたということなのです(↓)。

①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

②相談に応じ、適切に対応するための体制整備

③職場におけるハラスメントに対する迅速な対応

④被害者が相談したことで不利益に扱うことの禁止


【義務化の内容として、具体的に行うことは…?】
先述した、義務化内容を具体的に記載すると…、

①について:規程や方針の作成・周知

②について:相談窓口の設置

③について:事実確認・被害者への配慮・加害者への指導・再発防止策の検討、実施

について:給与・賞与への対応明記

ということになりますが、なかなか院長お一人では難しいところもあるかと思いますので、体制整備について支援が必要であれば、いつでもご相談頂ければと存じます。 

【パワーハラスメントの定義とは…?】
それでは、すっかり言葉が市民権を得た「パワハラ」ですが、その定義とは一体どのようなことなのでしょうか。まず、これを知っているかそうでないかで、何でも「パワハラだ!」と訴えてこられるリスクに、落ち着いて対応ができますので、是非、この機会に押さえておいて頂ければと存じます。

パワハラとは、職場において行われる 

1.優越的な関係を背景とした言動であって、

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

3.労働者の就業環境が害されるもの

 であり、3つの要素を全て満たすもの

つまり、先述した条文に該当する3つの要素が全て満たされなければパワハラに該当しないということです。
そして、それぞれ「優越的な立場とはどのような立場なのか」、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものとはどのようなものか」、「就業環境が害されるものとは」についてもきちんと定義づけがされており、加えて、どのような言動がこれらに該当するのかについても類型が整理されていますので、これらを正しく理解しておくことで、いざというときに毅然とした対応が取れますし、普段も言動に気を付けることができるのです。

今号ではパワハラ防止法の基本や定義についてお話をしましたが、次号ではクリニックで実際に起きた実例を踏まえ、どのような言動がパワハラに該当するのか、どのようなことに気を付ければ良いのか等についてお伝えする予定です。

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