前号では、日々のクリニック経営は、いずれ誰かに引き継いでもらうためにも、その「引き継ぎ手」の目線に立って運営するとことが大切であり、そのためには、健全な財務内容を作り、売上を上げる仕組みを作り、良好な院内マネジメントを行う、つまり、日々の「経営課題の解決がクリニックの価値を高める」ということをお伝えさせて頂きました。
この記事に対する反響は大きく、この記事を読んで、『これまで余り興味がなかった財務を勉強する気になった!』『何だかんだ言っても、患者さんは“来る”ものだと思っていたが、“呼ぶ”ことを真剣に考えるようになった!』、等々の声を頂いたのですが、最も多かったのは『自分がいなくなってからの院内マネジメントなど考えたことがなかった』という声です。
つまり、「財務改善」や「マーケティング」が確立していれば、次に引き継ぐ先生も「お金」や「売上」の目途が立ちますので、今から将来のために頑張りましょう、と言われてもピンとくるが、正直、院内マネジメントは、「今のスタッフと上手くやれるかどうかは次の先生次第ではないのか?」、要は、「現経営者の自分は関係ないのではないか?」と思っていたとのことです。
確かに、これまでにも『引き継いだら自分は関係ない=あとは任せた!』という先生方も多くおられましたし、逆に『引き継いだ自分が何とかしないと!』と、何か困ったことがあっても前院長には相談せず、人知れず苦労を重ね、何とか維持・発展を果たした承継側の先生も数多くおられます。この苦労した経験が、今後、経営者としての“糧”となるのかも知れませんが…、事前に分かっていれば回避できたトラブルもあるでしょうし、しっかりとした体制を作っていれば、辞めずに済んだスタッフもいるかも知れません。
組織は「生き物」であり、その時々に必要な人材が残ると言われていますので、承継後、「組織の自浄作用」で去らざるを得ないスタッフもいるかも知れませんが、明らかにそうではないケースも多く、承継側が「余計な苦労」をするだけでなく、「閉院の危機」を迎えることも珍しくありません(「あの医院、経営者が変わって、上手くいってないらしいよ…」という噂話をお聞きになったことも少なくないのではないでしょうか)。
やはり、安定的な売上を上げるために大切なのは『人』であり、この部分を軽視し無策で引き継いでしまえば、せっかく承継しても思うような経営ができないということなのです。
当然、「引き継ぎ期間」を設け、一定期間、前院長と一緒に診療することも多いですが、やはり前院長がおられる間は、その影響力から承継した先生の思う通りにはなかなか出来ません。そのため、どうしても事前準備が必要なのです。
【まずは、自院の『現状の把握』を行いましょう!】
承継のための「事前準備」としてもそうなのですが、承継は先の話でも、もし、自分に何かあって他の先生に任せることになった場合、果たしてスムーズに回るクリニックなのかどうか一度、俯瞰して現状を見つめ直してみる必要があります。
ポイントは、現在、自分が院長のクリニックであり、自分だから何とかなっている、または、気にしていないという「自分目線」を外し、あくまで「他人目線」で見ることです。
ご参考までにチェックポイントを一部ご紹介しますので、この機会に一度、ご自身のクリニックを振り返ってみて下さい。
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※ 参考:組織の現状チェックポイント(一部抜粋)
① 安心して働ける労働環境を整えているか
→ 給与・労働時間・休日・休暇・規定整備 → 健康診断・各接種・職場環境・ハラスメント ② 院長との意思疎通(コミュニケーション)は良好か → 朝礼・終礼・ミーティング他、報連相の状況 → スタッフからの意見具申状況(文句ではない) ③ 院内の業務改善・効率化に取り組んでいるか → 院長の指示がなくても自ら行っているか → 個々ではなく、全体に残して共有しているか ④ スタッフ間のパワーバランスは良好か → 極端に力の強いスタッフはいないか → 新人が辞めやすい環境になっていないか ⑤ 新しいこと、前向きなことに取り組んでいるか → 新しい提案をしても反対ばかりしないか → 現状を変えられることに過剰に反応しないか ⑥ 新しい先生を受け入れてくれそうか(※) → 「院長がお辞めになるときは私も辞めます」
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もう、お分かりかと存じますが、①ができていないと、労働環境も待遇も悪いのでスタッフは長続きしない、②がないとスタッフが何を考えているか分からない、そうなると自ずと③も自分が指示しないとやらない、そして、④の状態であれば、まず⑤は絶対に無理…、つまり、これらの項目ができていないクリニックを継いでしまうと、非常に苦労するということなのです(※ 尚、⑥については心情的なこともありますので、事前に把握しておけば良いでしょう。こればかりは仕方ありません)。
つまり「事前準備」とは①~⑤の項目を全て「〇」にすることであり、これができれば院長ご自身も働きやすくなり、将来の「承継」のためにもなるということですので、この体制作りにご興味のある先生は、是非、弊社にご連絡下さい。