労務・人材活性化

「同一労働同一賃金」に向けての対応とは?

経営VOL.145

先月、クライアントのM先生から、『来月から中小企業にも“同一労働同一賃金”が導入されると聞いたパートの一人から、「同一労働同一賃金ということは、常勤さんと同じぐらいの賞与が頂けるようになるのですか?」と聞かれました。私もよく分かっていなかったので、その場での明言は避けましたが…、実際、パートと常勤で給与や賞与に差をつけてはいけなくなるのでしょうか?同じ職種でも仕事内容が全く同じという訳でもないですし、どのように考えれば良いのでしょうか…?』というご相談を頂きました。

同一労働同一賃金とは、同じ労働に対しては同じ賃金を支払うという考え方であり、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と、非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者等)との間の不合理”な待遇差解消を目的とし、そのために「労働契約法」・「パートタイム・有期雇用労働法」・「労働者派遣法」等が改正され、『業務の内容や責任の程度等を踏まえて、支給される賃金や手当内容だけでなく、福利厚生や教育研修等を含めた全ての待遇を均衡・均等にしなければならない』となりました。そして、大企業では2020年4月から施行され、いよいよ、中小企業でも今年の4月から適用となりました。

それでは、この4月以降、法的に待遇差別が禁止された以上、同じ職種であれば賞与はもちろん、給与や手当を含めた待遇の差はなくさなければいけないのでしょうか。もし、そのようなことになれば人件費が一気に上がり、経営に大きな影響が出ることは必至ですので正しく理解したいところです。

M先生に限らず、最近、ご質問が多かった話題ですので、今号にて、その辺りについて詳しく解説させて頂きます。

【「同一労働同一賃金」を冷静に確認してみましょう!】
同一労働同一賃金とは、上述の通り、正規雇用者と非正規雇用者との不合理”な待遇差を禁じるものですが(パートタイム・有期雇用労働法第8条・9条)、厚生労働省のガイドラインに、同一の能力・貢献・内容であれば同一の待遇を行わなければいけないが、違いがあれば、違いに応じた待遇を行わなければならないという旨の記載があります。つまり、「違い」が明確であれば不合理でないということです。

それでは、具体的な「違い」をどのように明確にするのか、これは、厚生労働省の「パート・有期労働ポータルサイト(https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/)」にて詳しく紹介されていますが、要は、待遇規定(不合理な待遇差の禁止)待遇規定(差別的取扱いの禁止)に基づき、現状の労働条件を整理し、見直すということです。

【「均衡待遇規定」・「均等待遇規定」に基づくとは?】
まず、「均衡待遇規定」とは、パートタイム有期雇用労働法の第8条、「均等待遇規定」とは同法第9条に基づいた、「不合理な待遇」・「差別的取扱い」を禁止した規定です。

◆均衡待遇規定 (不合理な待遇差の禁止)
①業務の内容及び責任の程度
②職務内容・配置の変更の範囲
③その他の事情
の内容を考慮して不合理な待遇差を禁止するもの

◆均等待遇規定 (差別的取扱いの禁止)
①業務の内容及び責任の程度
②職務内容・配置の変更の範囲
が同じ場合は、差別的取扱いを禁止するもの

つまり、M先生が仰るように『同じ職種でも仕事内容が全く同じでない』のであれば、それを明確にすれば良いのです。

【この機会に、各人の「業務の棚卸」をやってみましょう!】
過去、当レポートでも、無駄な業務を減らすため(効率化するため)「忙しい!」という原因を明らかにするため等、事あるごとに「業務の棚卸」を推奨してきましたが、今回は「担当業務を明確にすることにより、待遇差を確認し、法律に則った運営をするため」に改めて実施することをお勧めします。

◆「業務の棚卸」のポイント(常勤とパートの差)

 業務の内容
・ 職種による専門業務の水準
・ 職種による専門外業務の有無

 責任の程度
・ 患者対応、教育、業績等の責任の有無
・ 所定労働時間、時間外労働の有無
・ 常勤のみが扱っている業務の有無

 その他の事情
・ 能力や経験の差等

ちなみに、M先生の医院でも実施してみたところ、件のパートさんは、常勤さんの業務内容とパートの業務内容が違うことを理解し、賞与も含めた待遇差については納得してくれました。また、それだけではなく、常勤さんがやってくれていたパートの自分が見えていなかった色々な業務を改めて知り、今では、積極的に常勤さんの負担を軽減しようと色々と手伝ってくれるようになり、やって良かったという結果になりました。

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