財務・税務戦略

①消費税の総額表示/②公示地価の公表

財務VOL.144

今号では4月より開始される『消費税の総額表示』と、今月23日に国土交通省より公表され『令和3年の公示地価』について解説していきます。

1.消費税の総額表示
(1)概要
今年の4月1日より「消費税の総額表示」が義務化されます。
これにより事業者が消費者に対して行う価格表示全て税込価格のみとなり、税抜価格による表示はできないこととなります。正確に言えば、総額表示義務自体は2004年から施行されましたが、二度にわたる消費税率の引き上げに際し事業者の事務負などを考慮して2013年10月1日から2021年3月31日までの間、特例措置として税抜価格のみの表示が容認されていました。

それが今回の義務化(期限切れ)により税込価格と税抜価格の混在が解消されることとなります。

(2)使用できなくなる価格表示
今回の義務化により、次のような価格表示は行えなくなります。
*10,000円+税

*10,000円(税別)又は(税抜)

*10,000円(本体価格)

また、別途店内の消費者が商品等を選択する際に目につきやすい場所「当店の価格は全て税抜価格となっています」という掲示を行い、個々の値札に税抜価格のみを表示するなどの方法も以後使えなくなります。

(3)総額表示の対象
では、どういったものに対し税込価格表示が必要となるのでしょうか?先述の通り、事業者が消費者に対して行う価格表示は全て対象となるのですが、具体的に言えば・・・

①値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ等の価格表示

②商品のパッケージなどの印字、あるいは貼付けした価格表示

③新聞折込広告、ダイレクトメールなどにより配布するチラシ

④新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メール等の媒体を利用した広告

⑤ポスター

などが該当することとなります。

(4)表示の方法
総額表示の方法についても何でもいいというわけではなく、消費者が誤認しないよう明瞭に表示しなければなりません。小売店などでよく見る税込・税抜の併記などについては、

・税込価格表示の文字が著しく小さい

    例:10,000円(税込11,000円)

・文字間・行間余白の設定により見辛い

    例:10,000円(税込11,000円)

・背景の色との対照性により見辛い

    例:10.000円(税込11,000円)

これらは景品表示法に違反し警告を受ける恐れがあります。
総額表示はあくまで「支払総額を一目で分かるようにすることにより、消費者の利便を向上させる」という趣旨のもと行われていることを踏まえた価格表示を行う必要があります。

2.公示地価
今月23日、国土交通省より令和3年の公示地価」が以下の通り公表されました。

  全用途 住宅地 商業地
R3 R2 R3 R2 R3 R2
全国 ▲0.5 1.4 ▲0.4 0.8 ▲0.8 3.1
 

 

三大都市圏 ▲0.7 2.1 ▲0.6 1.1 ▲1.3 5.4
  東京都 ▲0.5 2.3 ▲0.5 1.4 ▲1.0 5.2
大阪圏 ▲0.7 1.8 ▲0.5 0.4 ▲1.8 6.9
名古屋圏 ▲1.1 1.9 ▲1.0 1.1 ▲1.7 4.1
  地方圏 ▲0.3 0.8 ▲0.3 0.5 ▲0.5 1.5
  地方四市 2.9 7.4 2.7 5.9 3.1 11.3
  その他 ▲0.6 0.1 ▲0.6 0.0 ▲0.9 0.3

※地方四市は札幌・仙台・広島・福岡                      (単位:%)

 

やはりというべきか新型コロナの影響を大きく受けた結果となり、全国平均が平成27年以来6年ぶりの下落に転じています。 

商業地では7年ぶり、住宅地は5年ぶり下落です。
地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なるようですが、昨年からの変化はやはり商業地が最も大きく、特に三大都市圏、中でも大阪圏の変化が大きくなっています。

以下、用途別の特徴です。

■商業地
国内外の来訪客増加による店舗・ホテル需要により地価が上昇してきた地域や飲食店が集積する地域での下落が大きい

・一方、三大都市圏の中心地から離れた商業地や地方圏の日常
生活に必要な店舗等の需要を対象とする地域では上昇地点も見られる等、昨年からの変動率の変化は比較的小さい。

■住宅地
・中心部の希少性の高い住宅地や交通利便性に優れた近郊の住宅地で上昇が継続しているが、昨年より上昇が見られる地域の範囲は狭まっている。

・地方四市をはじめ地方圏の主要都市では上昇の継続が見られる等、昨年からの変動率の変化は比較的小さい

インバウンド需要の急減外出自粛の影響により三大都市圏の地価が下落、中でも訪日客頼りの面が強かった大阪府が大きく地価を下げており、下落率トップ10のうち8地点が大阪という結果です。

地方、四市再開発と堅調なオフィス需要を背景に下落は免れましたが、上昇率は前年よりも低下、地方圏も三大都市圏ほどではありませんが住宅地はここ2年、商業地は3年続いた上昇基調から下落に転じています。

なお、工業地は巣ごもり消費でネット通販が拡大したことにより0.8%の上昇と6年連続のプラス、また、テレワークの普及による首都圏からの移住需要により長野県の軽井沢など一部地域では地価上昇が起きたりもしています。

今回、観光地・繁華街を中心に新型コロナの影響を受け下落した地価ですが、既にアフターコロナを見越した高水準での土地取引も行われており、下落は一時的との見方もあります。

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