2007. 4. 10
スタッフ面接 :中編(第40話)

Category 新規開業医の悲しい物語

最初の人は、39歳主婦。子供が小学校に入るのを機にパートを希望し、応募してきた。

出産する前は、耳鼻咽喉科で受付をしていたそうだ。
ハキハキとモノを話す、美形ながらも元気な方だ。

面接で気を付けなければいけないのは、採用側ばかりが話をして、応募者の肝心な事を聞き漏らすこと。

肝心なこととは、確かに“志望動機”やら“自己アピール”も大切だが、やはり、医院の運営上、前職ではどういう経験をしたのか、勤務出来る日時、そのバックグラウンド(家族構成等)の三点セットだ。
佐川氏は話好きだ。隣で聞いていても辟易とする。

「ほ~、山本さん(仮名)は、○○医院におられたのですか?私あの辺りよく知ってます!」
「そこに△△クリニックというのがあって、そこも私が開業させたんですよ!…、」

今は関係ないだろう、そんな話は…。
応募者も最初なので愛想よく「そうなんですか~。」と返してはいるが…。

勘違いしてはいけないのが、確かにコミュニケーションを取る方法で最も手っ取り早いのは、相手との共通点を見つけて、その話題を広げることだが、その前に、相手の話を「聞く」事を中心にしなければ、面接にならない。
完全に打ち解けないと、ホンネが引出せないというのも一理あるが…、バランスの問題だろう。

自分の話を延々聞かせるだけ聞かせて、予定では10分で終わるはずが、30分もかかり、ようやく終了した。

この山本さん(仮名)が一体どういう人なのか分からないままじゃないか…。

「はい、次の方~。」

その方は、結局30分以上も待ってもらったことになるが、愛想良く入って来てくれた…。本当に申訳ない。

しかし、今日は延々と佐川氏の自慢話を聞かされるのか?

 

明日へ続く・・・

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2007. 4. 9
スタッフ面接 :前編(第39話)

Category 新規開業医の悲しい物語

面接場所は、内装がほぼ終わりかけのクリニック院内で行われた。面談する人数は、3日間で10名。

終わりかけと言っても、まだ工事の音が鳴り響く。

やはり、応募者はヤル気があるので、時間前に必ず来院する。
皆、適度な緊張しているせいか、受答えも丁寧だ。

そうだ、スタッフは面接に来る時は「ヤル気」なんだ!
しかし、採用され、働き始めて、しばらくするとモチベーションが下がり、辞めて行く…。

これは一体何故なのか?

単純なことが原因なのだが、これに気付かずスタッフ問題に苦労している院長は多い。

この辺りについては、別途、機会を設けて詳述する。
さて、面接が始まった。

どういう人を採用すればいいのか?これについては明確な「正解」は存在しない。

ただ、「こういう人はこうなるだろうなぁ…。」という予測は成り立つ。

この辺りのノウハウも、別途、機会を設ける予定だ。

履歴書を見ながら面接をスタートさせた。

 

明日へ続く・・・

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2007. 4. 6
履歴書の数だけ面接するの? (第38話)

Category 新規開業医の悲しい物語

スタッフ募集は、ハローワークに「求人」を出したり、土日に折込チラシを入れるのが一般的だが、最近は、街によくある「フリーペーパー」や、求人誌にも掲載する。

現在は、なかなか人を確保するのが難しいので、媒体を増やすか、条件を吊り上げるしか方法はないが、平成16年当時は、折込チラシだけでも30人以上の履歴書が送られて来た。

先生、この中で面接する人を選んで下さい。」

「選ぶんですか?全員面接しようと思っていましたが…。」

「何のために全員に会うのですか?履歴書の資格や経験である程度絞って会うのが普通ですよ…。」
佐川氏が言う通り、確かにそうかも知れない。

「しかし、縁があって応募してきてくれた人々は、仮にスタッフとして採用出来なくても、良い印象を与えておけば今後の大事な患者さんになる可能性もあるでしょ?」

「先生、あのね、どんな形であれ“不採用”になった人間が、いい印象を持つわけがないでしょ?そんなこと考えなくても、ここでクリニックを開業すると毎日最低でも80人は患者さんが来ると言ってるじゃないですか!?」

う~ん、確かに一理あるかも。正直、不採用になった人の気持ちなど知る由もない。あくまで推測だ。
ただ、毎日このクリニックに80人も患者さんが来るという事にそもそもの疑問があるんだが…。

「分かりました。それでは選んで面接しましょう。」

佐川氏の顔は、結局、自分の言う通りになるんだから、いちいち口を挟むなとでも言いたげな表情だ。

しかし、たったこれだけの事でも自分の意見を言うと何となく「自信」が湧いてくる。

さあ、明日は生まれて初めての面接だ!

 

明日へ続く・・・

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2007. 4. 5
スタッフ募集の手配 (第37話)

Category 新規開業医の悲しい物語

「先生、スタッフの募集かけときましたから!面接は何月何日で…」

相変わらず手回しがいいと言うのか何というのか…、私は時給も知らなければ何人雇うかも知らない。

この間、先輩医師の吉田先生と会って以来、“自分の開業には自分で責任を持つ”と心に誓った。
とりあえず、全てを把握しなければいけない!と意気込んでいたので早速聞いてみた。

「佐川さん、何故、私に一言相談してくれないんですか?」

「先生、当初、私に何と仰いましたか?“全てお任せします!”と仰いましたよね?何が気に食わないのですか?」

出た!明らかに心証を害している。しかし、ここまでは想定の範囲内。

「いや…、確かにお任せしますとは申上げましたが、やはり、自分の開業なので全てを把握したいと思って…。」

「という事は、先生、私の仕事を信用していないということですか?」

「そういう訳ではありませんが、クリニックの院長となる私が知らない方がおかしいでしょう!」

ついつい語気を荒げてしまった。

「そうですか、よく分かりました。これからはそうさせてもらいます。」

う~ん、どうやら怒らせてしまったらしい。
しかし、毅然とした態度を取ったことで、自分の中で何かが弾けた!
明日へ続く・・・

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2007. 4. 4
世の中というものを知る:後編 (第36話)

Category 新規開業医の悲しい物語

クリニックの工事具合は「今、どの段階なんだ?」

「そうですね、内装がそろそろ終わる頃ですね。これから看護師などのスタッフ募集をするところです。」
「内装の費用はどれぐらいかかった?」

「確か…、1,500万ぐらいだったかと…。」

「そうか。最初は、“坪単価○○円でやらせてもらいます!”と安い金額を提示して、工事が始まってから、変更・変更を言ってきて、追加工事云々で坪単価を上げる業者もいるらしいから気をつけないとな。」

ほ~、そんな業者もいるのか。全然知らなかった…。すごいなあ…。

これは前回と逆パターンで、最初に安い値段でアプローチし、結果的に目標金額まで吊り上げていく方法らしい。

誤解を招いてはいけないので付け加えるが、世の中には本当に良心的な業者さんも多くいるので一概に全ての業者を疑ってはいけない。しかし、「悪徳業者」と呼ばれる業者が存在することも確かだ。

「ただ、素人の俺らでは分からん部分が多いからな。」

「先輩、医療器械はどうですか?」

「うん…、俺はとりあえず提示された金額でそのまま契約したが、後からインターネット何かで調べると、結構、自分で買った値段より安いのも多々あったなあ…。」
そうなのか…。ま、これも冷静に考えれば当たり前なんだが…。

「しかし、結構安くなってませんでしたか?」

「確かに、最初、見積もりを見た時、俺も“安っ!”と思ってしまったが、定価に惑わされたところもあるよな。で、よくよく見れば定価そのものが破格のモノも多かったし、調べて見ると安いと思っていた値段より、もっと安かったりしてたから、最近はメーカーに直接問合せたりしてるよ。」

そして、先輩からアドバイスがあった。

「こないだ、大川君が来た時、“自分ではほとんど何もしなかったから高くついた”と言ったよな?」

そうだった。その時は舞い上がっていたので、さほど気にかけなかったが…。

「だから、佐川氏に全て任せるのもいいが、自分で調べたり、内容を把握したりすることが大切なんだとも言ったよな?忙しい中、厳密にやろうとすると難しいけどな。」

そんな事仰ってましたっけ?自分が聞いてなかっただけか?

いずれにしろ、今日は来て良かった。

 

明日へ続く・・・

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2007. 4. 3
世の中というものを知る:前編 (第35話)

Category 新規開業医の悲しい物語

「どうだ?順調に進んでるか?」

休診である木曜日の午後、先輩医師でクリニックを開業しておられる吉田先輩に時間を取ってもらった。

「ええ、おかげさまで、何から何まで佐川氏にやってもらって助かっています。いい人を紹介していただいて、ありがとうございます。」

これは事実なので素直にお礼を言っておいた。

しかし…、やはり何点か気になることがあるので思い切って聞いてみた。

「こんな事を聞いていいのかどうか分かりませんが、先輩は、佐川氏に幾ら払われました?」

自分はディスカウントしてもらっているはずなので、先輩は300万円支払っているはずだ。

「え~っと…、結構安くしてもらって、確か200万円だったかな?」

…同じだ!自分だけが安くしてもらった訳ではないのか…。

結局、いきなり200万円と言われるより、“本来、○○円のところを、特別に譲歩して○○円”という言い方の方が、払う側の財布の紐がすんなり開くということだ。

スーパーやデパートでも、元々の値段に二重線を引いて、その下に「値下げ価格」を掲示していることがよくあるが、聞いた話によると、元々、二重線を引っ張っているその値段は存在しないらしい。

つまり、高い金額を見せた上で、その下の金額を提示するという、一般的に行われている手法だ。

それを「自分だけ安くなった!」と当時は喜んでいたが、違うのか。世間知らずも甚だしい…。

クリニックを開業する”という大きな不安を、これぐらいの金額で消せるのであれば…と、お金を支払う事で逃げ、その金額が通常よりも安いということで自己弁護していた自分が情けない。

次の質問をするのが怖くなってきた…。

 

 明日へ続く・・・

 

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