Category 新規開業医の悲しい物語
今日は、記念すべき「クリニックの開業日」。
9時に診察開始ではあるが、8時前に出勤した。
内覧会も行ったし、電話帳にも掲載した。駅の看板も大きいスペースを確保した。ただでさえ80名は最低来る場所なんだから、初日は少なく見ても内覧会の参加者の半分である20人は来るだろう。
失敗の無いようにしなければ…!
徐々に、“気合い”が“気負い”に変化しつつあったが、当然、自分では気付かない。
院内をキレイに掃除する。しかし、新しいので全くと言っていいほど汚れていない。
時計を見ると、まだ8時30分…、もう気の早い患者さんなら来るかも知れない。
そんな大事な時間なのに、スタッフはまだ来ない!
15分前出勤で構わないと言ったが、初日ぐらい早く来てもいいだろう!全く気が利かない!
と、イライラしている時に、「おはようございま~す!」と明るい声で受付の寺内さんが入ってきた。
「今日は初日なんだから、もう少し早く来れないの?患者さんが待ってたらどうするの?」
最初が肝心だ。バシッと言ってやらなければ!という佐川氏の言葉が頭をよぎる。
「…すみません。」
明るい声のトーンが沈んだ。
本人からすれば15分も早く来たつもりなのに、小言を言われるなど夢にも思わなかっただろう。
あとから聞いた話だが、寺内さんはオープニングスタッフとして、自分なりに自分の役割を果たそうと思って緊張し、昨晩なかなか寝ることが出来ず、2~3時間しか寝れなかったそうだ。
それでも朝5時に起きて、ご主人と子供の弁当を作り、朝食を食べさせ、上の子を学校に送り出してから、下の子を保育所に預け、洗濯を済ませ、昼食の準備をしてから、少しでも早く出勤し開院に備えよう!と、自転車を飛ばして出勤して来たらしい。
それが、「もう少し早く来れないの!?」と言われた日にゃ…。
子供を持つ主婦の朝の15分というのは非常に大きく、それを早めるということがどれほどの労力なのか、当時の私は全く知る由もなかった。
明日へ続く・・・