Archive for the '新規開業医の悲しい物語' Category

2月 14th 2007
開業が勝手に進む(第6話)

Posted under 新規開業医の悲しい物語

面談から数日後、佐川氏から連絡があった。

「先生、開業までのスケジュールが組み上がりましたので、一度見て頂きたいのですが…」

ほう、もう出来たのか。やはりコンサルタントというだけある。

早速、前の喫茶店で面談し、そのスケジュール表に目を通した。

開業日:平成16年9月
場  所:○○駅前医療ビル
資  金:約5,000万  …。

今が1月なので、約9ヶ月後か…。
家内と色々話し合ったり、病院に意思を伝えて引継ぎしたり、色々ありそうだが、そんな期間で開業出来るものか?
少し性急のような気がするが…。○○駅は確かに家の近所ではあるが、車で20分というところか。自分の医院に通勤をする訳か。5,000万円って一体何のお金?高くない?相場ってこんなものなのか…?

平静を装いつつもパニックになる。

その表情を見越したかのように、佐川氏が言葉を続ける。

「先生、少しペースは早いかも知れませんが、これで大丈夫です!また、先生は非常にラッキーです。この○○医療ビルは、立地もそうですが、マンションもどんどん建って人口が増加する場所ですので、早い者勝ちだったんですよ。とりあえず仮に押さえておきました!もし、先生が宜しければ正式な契約に入ります!」

図面を広げて説明を続けるが、見てもいない物件の図面を見たところで、何のイメージも湧かない。普段目にしないものだから、「線がたくさん引かれている大きな紙」にしか見えない。
しかし、患者さんが間違いなく大勢押しかけるという佐川氏の言葉に、「まあ、コンサルタントが言うのだから間違いないか。」と、またまた、妙に他人の言うことを信じるという行為を自己弁護し【 承認 】してしまった。

「先生、いかがです?」

いや、いかがです?とニコニコして言われても…。こっちは“任せる”と言ってしまっているので、答えは1つ。

「それで進めて下さい。」

どうせお願いするんだし、自分が下手に考えたところで素人なんだから、これでいいだろう。

診察の腕には自信がある。しかし、この手の話になると、「自分は素人」と決め付けてしまい、「自分で考える」という事を全くしなくなっていた

 

明日に続く・・・

No Comments »

2月 15th 2007
早い者勝ち?(第7話)

Posted under 新規開業医の悲しい物語

「先生、次の休みにでも、とりあえず物件を見に行きませんか?」

いささか順序が逆のような気もするが、早い者勝ちという優良物件だから仕方ないのか。
言われるがまま、次の休みに連れて行ってもらった。

新築ビルだけあって、さすがにキレイだ。(これも当たり前だが)
立地も駅前で確かに人通りが多い。しかし、新しいマンションは、この物件の反対側に集中しているような気がする。

医療テナントは5件。しかし、「契約済」は1件のみ。ウチで2件目のようだ。

「あれっ?早い者勝ちだったんじゃぁ…?」

佐川氏はすかさず、

「先生、残りの3件も“商談中”なんですよ。だから、もうここに入りたいと言っても入れないんですよ。」

そうか。商談か…。ん?商談?何の話し合いをするのか?自分は何一つ相談されていないが。

一抹の不安があって聞いてみた。

「皆さん、決める事と言っても“入居するかしないか”ぐらいじゃないですか?他に何かあるんでしょうか?」

「そうですね、入居の時期はいつにするとか、家賃をどうするかとか…、それぐらいでしょうかね。」

えっ?、入居の時期は開業日の関係があるから分るが、家賃というのは?交渉出来るのか!

「ウチは大丈夫なのですか?」

「心配ありません。いや実は、私は、ここのオーナーと親しくてですね、先生だけ特別に坪15,000円のところ、12,000円に下げてもらう約束をしていますから大丈夫ですよ。」

そうか、やはり任せて安心だったのか。しかし、“先生だけ特別に”というのは嬉しい話だ。
自分の心配は「杞憂」だったのか。

広さが42坪と聞いているので毎月の家賃は、42坪×12,000円=504,000円 
もし、15,000円なら、毎月63万円。これだけで、毎月126,000円、年間にして約151万の節約になる。

佐川氏に支払うコンサル料も、100万安くしてもらっているので、現段階で、約250万も安くなっている…。

能天気だった私は、「吉田先輩にお礼を言わなければ!」と、すっかり「得した気分」を満喫していた。

 

 明日に続く・・・

No Comments »

2月 16th 2007
患者さんが集まると言い切るワケ(第8話)

Posted under 新規開業医の悲しい物語

自分の新しい「城」となるテナントが決まり、患者が集まるという太鼓判ももらっていたから何の不安も無かった。

しかし、たまたま、医療従事者向けの雑誌に、最近のクリニックにおける開業事情が掲載されており、「競合が激化し、患者数確保が困難。」と大きく書かれた記事を目にした。

「あれだけ人通りが多く、駅からあれだけ目に付けば患者は多いとは思うが…、そう言えば、この地域の人は、今現在病気になった時はどこに通っているんだろう?ウチが開業したからと言って、その人たちが全て流れて来るワケでもないだろうし、長年通っている“かかりつけ医”もいるだろう。本当に大盛況になるのだろうか?」

気になって、佐川氏に連絡してみた。

「先生、私どもで“診療圏調査”を行っていますので大丈夫です。もし、気になるようでしたら、その結果を、次の打ち合わせの際にお見せしましょう!」

何だ、そんなものがあるのであれば、先に見せるのが普通じゃないのか?それとも、それは開業物件を進めるコンサルタントの内部資料なのか?まあ、いずれにしても不安を解消する材料になるのは間違いないだろう。

一体どんな資料が出てくるのか…。

後日、佐川氏が持参した「診療圏調査結果」というレジュメは素晴らしかった。

物件を中心に、500m、1kmと円を書き、その中の人口を役所等で調べ、競合医院のプロットもしてあって、よく分らないが色々調べてあるみたいだった。それらの結果として、1日の来院推定患者数 80名となっていた。

この80名が多いのかどうかぐらいは分る。非常に多いと思う。根拠もしっかりしている(と思う)。

これは信じていい数字なのだろうか…?ただ、自分で検証する術がないので信じるしかないのだが…。

「先生、1日80人なので、午前40名、午後40名という計算です。患者さん1人当たりの単価が仮に5,000円とした場合、そうですね、休みを抜いて毎月平均22日の診療日数として、年間売上は約1億ぐらいになりますね!」

年間1億の売上げ?よく分らないが、今の年収から考えると、すごい話だ。
仮に、経費が半分かかったとしても残り5,000万円。

「年収5,000万円か…。」

頭の中は、それだけが支配するようになった。

今から考えると、恥ずかしい限りだが、気持ちの中で一番楽しかった時期かも知れない。
 

明日へ続く・・・

No Comments »

2月 19th 2007
はじめての「資金計画」:前編(第9話)

Posted under 新規開業医の悲しい物語

以前、見せてもらった「資金計画」には、開業必要資金が約5,000万円となっていた。

これも、今から思えば情けない話ではあるが、何故、「高くないか?」と一瞬、胸が痛んだ瞬間に、「何に対して、幾らかかるのか?」を正確にその場で把握しようとしなかったのか(合計欄しか見ていなかった)、また、本当にこの金額で収まるのか確認をするべきだった…。
最初から約5,000万円と聞かされていると、その金額が頭を支配する。つまり、TOTALが5,000万円前後で納まれば「予定通り」と思ってしまうし、佐川氏からすれば、5,000万円まで使っていいですよという承諾を得たこととなる。

そこに、節約の精神はまず生まれない。限度額一杯まで使おうという消費意識のみが支配するだろう…。

佐川氏の計画は下記のようなものだった。

テナント保証金 :  6,048,000円(家賃の12ヶ月分 504,000×12ヶ月)
不動産仲介料 :    504,000円(家賃の1ヵ月分)
開業まで家賃 :  1,512,000円(工事着工から開業までの3ヶ月分)
医師会入会金 :  5,000,000円
内装費用 : 15,000,000円(消費税別:750,000円)
設計管理料 :  1,500,000円(工事費用の10%)
什器備品 :  2,100,000円(税込)
医療器械 :  3,150,000円(税込、一部リース予定)
運転資金 : 12,000,000円(月200万の運転資金×6ヶ月分)
印刷物等 :    500,000円(新聞折込チラシ・求人広告・その他諸々の諸経費)
佐川氏支払 :  2,000,000円(開業コンサルティング料)

合計金額 : 50,064,000円(概算値)

完全にマインドコントロール状態であったから仕方ないのかも知れないが、開業コンサルタントの佐川氏は全面的に自分の立場に立って動いてくれていると信じ切っていた。だから、自分があれこれ心配するのは無駄のように思え、かつ、あまり余計な事を言って、佐川氏の機嫌を損ねるのも怖かったという事情もある。

更に、コンサルティング料も先輩より100万円安く、家賃も下げてもらっているという事実もある。

「先生、自己資金は1,000万円ぐらい準備出来ますよね?」

そういえば、佐川氏と会った最初の面談時にも聞かれていたが、バタバタして何も考えてなかった。

「はい…、まあ…。1,000万ぐらいなら準備出来ると思います。」

自分の貯金は、確か、かき集めると500万~600万はあったと思うし、幾ら持っているか知らないが家内も協力してくれるだろう。また、親父も開業する際には援助してくれると言ってくれていたので、余裕があると思う。

 

明日へ続く・・・

No Comments »

2月 20th 2007
はじめての「資金計画」:中編(第10話)

Posted under 新規開業医の悲しい物語

早速、家に帰って、家内に初めて相談した。

正確に言うと、「初めてまともに相談した」と言うべきか。開業を決意した当時は、家内も色々と心配をしていたようだったが、コンサルタントの佐川氏に任せている旨を伝え「心配ない!」と言って以来、何も聞いて来なくなっていた。
今から思えば、「お前は口を出すな!」というように感じていたのかも知れない。

「1,000万円ぐらい準備出来るよなあ…。」

「アナタ何を言ってるの?今あるお金は子供の学費なので手を付けずに置いておくんでしょ?アナタの貯金で何とかして下さい!

余りの非協力的な態度に、思わず “ むっ ” とした。

しかし、これも後々スタッフを自分で雇うようになって初めて分かることだが、例え、妻と言えども自分に協力してもらうためには、いかにアナタが大切で重要なのかを理解してもらい、話をよく聞き、嬉々として参画するようにもっていかないといけない。

要は、「頼りにしてるよ!」という、相手の自尊心を敬う態度が大切ということだ。

「俺のすることに口を出すな!」

と言っておきながら、

「協力しろ!」

と言われれば、誰だっていい気はしない。所詮、人間は理屈では動かない。パッションだ。

「ウチの従業員はヤル気がない」
「ウチの従業員は優秀でない」

と、嘆く経営者は多いが、その原因が自分自身であると気付いている経営者は非常に少ない。
私自身も、開業してスタッフの扱いに散々苦労をした挙句に分ったことだ。

さて、家内が一銭も出さないとなれば、次は親父だ。

「親父、開業資金の話だけど…。」

「お前、わしに何の相談も無く場所まで決めたそうだな!勝手にしろ!金は出さん!!」

小さな会社を経営している親父は、昔気質なので、非常に気前が良い一方、自分に何の相談もなしに決まった事や、納得のいかない事には、“ビタ一文”払わない人だった…。

相談しなければと思いつつ、後回しにしていたのがマズかった…。

 

明日に続く・・・

No Comments »

« Prev - Next »