Archive for 3月, 2007

3月 30th 2007
買取かリースか (第33話)

Posted under 新規開業医の悲しい物語

見積書をさらに見ていくと…、何と、合計額が1,000万円を超えている。

“定価よりも安く購入出来る”というメリットがあるのかも知れないが、確か、医療器械・什器備品の合計で約520万円の計画では?

「佐川さん、これって…、大丈夫なんですか?」

常識的に考えて、500万円で済む話が1,000万円に膨れ上がると誰でも不安になる。
「根保証」じゃあるまいし…。

「先生、一部“リース予定”と書いてるでしょ?」

書類には全部目を通してからモノを言え!と言わんばかりのあしらい方だ。

「ま、500万円分をリースにしたところで、月々10万円ぐらいですし、5年で終わりますし、大丈夫ですよ。」

そうか、500万円が月々10万円で済むのか…、ん?ちょっと待てよ。

毎月10万を5年間支払えば、10万円×12ヶ月×5年=600万

100万円も多く払わなければいけないのか!

これじゃ、単なる「問題の先送り」ではないのか?

「…、100万円も余分に払うんですね…?」

「当たり前でしょう?500万円を5年かけて返すのと同じ理屈ですよ?当然“利息”がかかりますわ。」

そんな常識的なことを、わざわざ聞くな!というオーラが眩しい。

この時点で、リースについても複数の会社に“相見積”を取れば、例え1万円でも節約出来たのだが、当時の私にそんな知恵も勇気もなかったので、月々のリース料10万円が決定した。

もし、現在の私ならば…、

自分の診療方針を決め、それに基づいて購入する物品・医療器械を自分で選択し、まずは買取リースメリットデメリットを把握し、買取の資金を事前に計算した上で、どの医療機器をリースにして、どの医療器械を買取りにするかを決定する(このポイントについては紙面の関係上割愛する)。

税理士事務所には、買取リースの「節税額」及び「資金流出額」の対比(当然、償却資産税を加味)、買取の残存価格における「除却損」等をシミュレートしてもらう。
(良識のある担当者なら、言われなくても出して来るが…)

さらに、物品購入の場合は、1社でなく、複数社の相見積を取るだろう。

これぐらい出来なければ、経営者にはなれない!と、当時の私にいってやりたい…。

 

明日へ続く・・・

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3月 29th 2007
医療器械・備品の価格 (第32話)

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もう既に、佐川氏が、どのような医療器械や備品を購入するか、販売業者に依頼を済ませている。

以前、軽く打ち合わせみたいなものをしただけだったが、その話合いが最終決定だったらしい。

先生、私が動けば、びっくりするほど安くなりますよ!」

と、彼が言っていたのを思い出しながら、何気なく「御見積書」に目を通した。

診察デスク  定価単価100,000円  納入単価 70,000円
処置ワゴン  定価単価 60,000円  納入単価 40,000円

ふ~ん…、まあ、びっくりするほどではないが、安くなっているなあ…。

本当は、もっと安くなるらしいが、その差額は佐川氏に流れていると知ったのは、ずっと後の話だ。

「どれどれ、あとは…、」

一般撮影装置 一式  定価単価 6,000,000円  納入単価 2,500,000円

安っ!!6割引?びっくりした!

他の医療器械も軒並みそれぐらい(3割引~6割引)のディスカウント率だ。

「あ、おはようございます!先生、もう来られてたんですか?」

佐川氏が販売業者と連れ立って入って来た。

「佐川さん、これ…、スゴイですね!こんなに安くしてもらって大丈夫なんですか?」

販売業者がすかさず、

「先生、この値段は佐川さん価格です。他所ではこうはいきません。ウチはいつも泣かされてるんですよ~!」

そうなのか~、他所にはないメリットを自分だけは享受しているんだなあ…、と幸せな気分になった。

明日へ続く・・・

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3月 28th 2007
医院名・標榜科目はどうするか (第31話)

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開業届を作成しますので、医院名標榜科目診療時間スタッフ名を教えて下さい…。」
「あと、敷地平面図ありますか?」
医師免許証のコピーありますか?先生の住所も教えてもらえませんか?」
「履歴書作ってもらえませんか?」
「あと…、」

吉村氏から連絡が入った。

どれだけ聞くことがあるんだ?
何故、この間、領収証を渡した時に聞かないんだ?

医療専門税理士事務所』と謳うのであれば、せめて、『開業時のヒアリング事項一覧』ぐらいはないのか?

佐川氏にも同じ事を感じたが、何故、最初から分かっていることについては事前に案内してくれないんだろう…。

いずれにせよ、正式な名前をどうするか佐川氏と決めていなかった。

自分の中では、「大川医院」というぐらいしか考えていなかったが、果たして佐川氏は…、

「先生、それでは何をやってる医院か分からないでしょ?」

「はあ…。」

先生の医院は、“おおかわ内科胃腸科クリニック”でいきましょう!もう、それで方々に手配かけてますよ。」

「まず、“ひらがな”がポイントです!これは、最近の主流で“親近感”をアピールします!」
「そして、胃腸科を入れておかないと…!先生は“消化器専門”なんですから。」

そうですか。記念すべきクリニックの“命名”は終わってましたか。何故に一言も相談がないかなあ…。

ただ、佐川氏のスタンドプレーだったが、この名前は気に入った。

しかし…、だ!

極端な例だが、自分の子供の名前を勝手に他人に命名されて、“気に入った!”という親がどこにいる?

何かの本で読んだが、“愛”の反対語は“無関心”らしい。

まさに、このクリニックに対する自分の気持ちが…無関心に近い証拠だ!

自分の「城」なのに、落ち着かないのも当然だ…。

 

明日へ続く・・・

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3月 27th 2007
計算のスペシャリスト(第30話)

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税理士事務所の担当者である吉村氏は、ひたすら目の前で電卓を叩き、ひたすら領収証を分けてくれている。

確かに、最初は電卓を打つ早さに「神業」を感じ、驚愕していたが…、

彼が作業している間、私は何をすればいい?

しかも、計算中なので話しかけることも気が引ける。

よく考えたら、事務所に持って帰って作業してくれれば良いだけの話なのでは…?

しばらく、手持ち無沙汰な状態で、内装中の「自分の城」をウロウロしていた。
「自分の城」なのに、落ち着かないのは何故だろう…。

何となく医院を開業する決心をして、何となく佐川氏を紹介されて、何となくここまで来たが…、
やはり、自分の魂がこもっていないからであろうか?私は一体何がしたくて医院を開業するのか…?

そんな事をボーッと考えたりしていると、彼がようやく口を開いた。

「先生、ある程度は出来ました…。それでは、事務所に持って帰って最終チェックしてご報告します…。」

何だ、それ?持って帰ってチェックするなら、今の待ち時間は何だったのか。
素人から見ても非効率極まりない!

よく分からないが、当時は“税理士事務所ってこんなものか”と思っていた。

平成19年になった今でも、内訳が不明瞭で、かつ、『高額な』顧問料を取って、やってることと言えば、単なる領収証の整理と各種計算のみで、何のアドバイスも情報提供もないという事務所は多いが…、

この業界もレベルが進んでおり、決してこんなものではない。

それを知ったのも、つい最近のことだ。

こんな税理士事務所に毎月7万円も支払っていたと思うと、今から考えても腹ただしい。

 

明日へ続く・・・
 

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3月 26th 2007
計算のスペシャリスト(第29話)

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後日、紹介されたのは、税理士を目指して勉強中の、入社2年目の吉村氏(仮名)という人物。

色白で、線が細く、昔よくいた「ガリ勉」タイプに見えるが…。
時々ズレ落ちそうになる大きなメガネを人差し指で上げながら、これまた小さな声で、

「はじめまして、吉村です…。」

なんだか心細くなってきた。この人に、医療専門の税務関係を何でも相談出来るのだろうか。頼りなさそうだ。

黒田氏は、紹介が終わると次のアポイント時間が迫っていると言って帰ってしまったので、工事中の部屋に吉村氏と2人きりになった。

「…。」
「…。」

お互い、何となく気まずい空気が流れる。何か話さないと…。

そう思って少し困っていたその時、

「あのう…、先生、今まで使われたお金の“領収証”を全部出してもらえますか?」

と吉村氏が言ってきた。しかし、いちいち声が小さい。

医院の開業費の計算と、資金繰りの計算をしたいので…。」

たまたま、お金の計算をするために領収証は全て保管しておいたから良かったものの、もし、何も知らずに捨ててしまっていたら…。最初に佐川氏からアナウンスがあるべきではないのか?

それとも「一般常識」なので誰も教えてくれないのか?いずれにせよ、残していて良かった。

領収証を詰め込んだビニール袋を吉村氏に手渡す。文字通り、グチャッっとしたままだ。

吉村氏は、領収証を、1枚1枚見ながら、
「これは経費になりません、これもダメです、これも、これも…、」

と何かを唱えるように、かつ、屋台の“ひよこ売り”のごとく、手際良く、経費になるものとそうでないものを分けていった。

そして、一通り分け終えると、これも目にも止まらない速さで電卓を叩く。
電卓を叩く手をチラッとも見ず、ひたすら領収証をめくって叩いている。

「これが、税務処理の専門部隊か…!」

思わず、感嘆の声を上げてしまった。

見たことがないなら、一度、自院が契約している医療専門の税理士事務所会計事務所の担当者にやってもらってみればいい。本当にスゴイ!!

但し、これが、仕事が出来るという証明ではなく、単に作業効率が良いだけと気付くのは、もっと先の話だ。

 

明日へ続く・・・

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3月 23rd 2007
税理士事務所の仕事 : 後編(第28話)

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先生のところの税務計算などを実際に行う担当者をご紹介したいのですが…。」

あれから3日後、黒田氏から連絡があった。

「…え?ウチは黒田さんが担当してくれるのではないんですか?」

「いいえ、私は“営業”ですから!担当者にはなれないんですよ!」
相変わらず元気のいい返事だ。悪気がないというか何と言うか…。

色々話を聞いていると、黒田氏は“営業”、かつ、お客さんが困った際に色々一緒に考え、提案する“コンサルタント”であり、毎月の巡回監査や税務処理の定期的な業務は、それ専門の部隊があり、そこの人間が行うとのこと。

よく分からないが、もう、そう決まっているのであれば、こちらが何を言っても、ひっくり返らないんだろう。
ま、担当してくれる人が、何でも相談しやすそうな人であることを祈ろう。

 

明日へ続く・・・

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3月 22nd 2007
税理士事務所の仕事 : 中編(第27話)

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「次に、給与計算についてですが、どうされます?」

そうか、医院を開業したらスタッフに給与を支払わなければいけないよな…。よく考えたら、今まで「給与明細」をもらっていたが、誰が作ってたんだろうか。

病院では、経理課が作っているのか…?

新規開業の医院に経理課はない。となれば、他所にお願いすることとなるよなぁ…。

そうか、それを税理士事務所にお願いするのか!

普段、考えた事もない話なので、理解するだけでも時間がかかる。

で、この「給与計算業務」も「巡回監査業務」と同じく段階があるようだ。

タイムカードを送り、その時間集計から税理士事務所にお願いする場合、

時間の集計は自分で行い、その集計結果をFAXするだけの場合、

給与計算ソフトで自分で作ってチェックだけしてもらう場合…、

更に従業員の人数によっても値段が違うが、新規開業のクリニックなら、最低ランクの10名未満で十分とのこと。

値段は20,000円 ⇒ 10,000円 ⇒5,000円となっている。

当時の私は、丸投げするしか選択肢がなったので、

「じゃ、毎月2万円のコースでお願いします…。」

まるで、料理のコースをお願いするような…、そんな気分だ。
ただ、料理なら、「ええい!奮発しよう!」みたいな、高いお金を払っても、ある意味“楽しい”ものだが…。
業務委託料を奮発してどうする!

これで、毎月合計7万円の出費が決定した。

 

明日へ続く・・・

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3月 20th 2007
税理士事務所の仕事 : 前編(第26話)

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「次に、ウチの業務形態についてご説明します。」

また、延々話した挙句、「先生、どうされます?」と、なるんだろう。面倒だが付き合うしかない。

「ウチの担当者が毎月訪問し、請求書・領収証の整理をして、通帳のコピーを預り、電子カルテから出る社保・国保の総括表を…、」

簡単に言うと、毎月、税理士事務所のスタッフが「巡回監査」という名目で訪問するから、資料を準備しておいてくれという話だ。

その準備の方法が、領収証や請求書を整理もせずにそのままグシャっと渡すか、ある程度ファイリングしておくかで毎月の「顧問料」が違い、更に、こちらで会計ソフトを入力まですれば、さらに安くなるという。

値段で言うと、50,000円 ⇒ 40,000円 ⇒ 30,000円ということらしい。

この税理士事務所の話は、開業後にたっぷりと話すことが出てくるので今はここまでにしておく。

「…と、以上です。先生、どうされます?」

医院の開業もまだな状態で、看護士や事務のスタッフも雇っていない現状で、何をどう判断しろというのか?

佐川氏が口を挟む。

「先生、新規に医院を開業して患者さんが押しかけてバタバタするのに、いちいち領収証の整理など出来ませんよ。もう、一切合切任せられたらいかがですか?だいたい皆さんそうされてますよ。」

「そうですか、それでは、その月5万円でお願いします。」

自分の中では、領収証の整理やファイリングぐらいは出来そうな気がしたが、経験豊富な佐川氏が

忙しくて出来ない」というのだからそうなんだろう

今から思えば、本当に愚かな話だ。

これで毎月5万円の顧問料が決定した。

 

明日へ続く・・・

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3月 19th 2007
結局「お金」がいるのか : 後編(第25話)

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医院の新規開業届をお願いするのにお金が必要と言われた。

後から分かったことだが、こちらから「自分で出来ないからお願いします。」と言わせる流れにしないと
料金を請求しにくいということらしい。つまり、「そんな金を払わないといけないなら自分でやるよ!」と
言われてしまうと、その後のコンサルティング(顧問契約)にも影響するので最初に

「アナタには出来ない難しい仕事でしょ?聞いても分からないでしょ?それでも自分で出来ますか?」という印象を植え付け、「出来ないんだったら、我々専門家がやりますよ。その代わり作業料は下さいね。」というストーリーだ。

最初にこれをしておけば、今後、何か相談を持ちかけられても

「解決出来ない先生のかわりに、我々がやりますのでお金を下さい。」

という図式が出来上がるという寸法だ。

無論、「普通は有料ですが“無料”でさせて頂きます。」という場合の恩着せ度合いも高まる。

更に、医院の新規開業届などは、手順を踏めば誰でも出来る作業であり、もし分からなければ、直接、担当の役所に電話して聞けばいい。

最近は、昔と違って、親切な窓口が多い。これも自分でやってみて初めて分かった事だ。

また、お願いしても、これらの手続きは「無料」でやってくれる業者も多いということも後々知ってしまった。

だからと言って、「お金が要るのであれば、自分でやります!」と啖呵を切れば良かったのか?

当時の私では無理だったろう。
何せ、医院開業については人を頼らなければいけないと思い込んでいたから。
そして何よりも、自分に自信を無くしていたから…。
 

明日へ続く・・・

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3月 16th 2007
結局「お金」がいるのか : 前編(第24話)

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医院開業手続についてですが、具体的には保健所にクリニックを開業する旨の事前相談に行き、
図面のチェックも行い、医院の開設届を9月開業でしたら8月10日までに提出し、X線についても
保健所が…、その後、社会保険事務局で…、」

いきなり、今回のクリニック開業手続の説明を始めた。

こちらとしては任せるつもりでいるのに、このような説明を何故するのか?
最初からヤル気がないので、全く頭に入らない。

元気な声で話は続く。

「医院の開業後はですね、税務署に…、県税事務所に…、労災、生保、原爆等の届出が…、」

元気な声で、興味のないことを延々話されることほど、辛く、退屈なことはない。
自慢話を延々聞かされたり、知識をひけらかしたいがための話を延々聞かされるのと同じぐらいの辛さだ。

「…と、以上なのですが、これらの医院開業に伴う手続きですが先生、ご自分でされますか?」

「はぁ?」

「いや、もし、先生がされるのであればウチはやりませんし、どうされますか?」

「どうするも何も、一連のクリニック開業の手続きはお願いしようと思っていましたが…。」

「分かりました。それではウチで全てさせて頂きますが、佐川さんのご紹介ですので、本来15万かかるところを10万でさせて頂きましょう!」

何だそれ?結局、お金がいるのか。しかも、またまた恩着せがましいデイスカウント…。
安くするというだけで、誰でも喜ぶと思っているのか?

数ヶ月前の自分は喜んでいたなあ…、恥ずかしながら…。

こういう、数ヶ月前の自分のような人種がまだまだ多いから、こういうトークがいつまでも通用するんだろう。

明日へ続く・・・

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3月 16th 2007
医療専門の「税理士事務所」(第23話)

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佐川氏から医療専門の「税理士事務所」を紹介された。

「初めまして!私、◆◆税理士事務所の黒田(仮名)と申します!」

元気の良い青年だ。見た目も誠実そうだし信用出来そうだ。年の頃は30歳前後か。

「先生、この黒田さんは医療経営のスペシャリストなんです!クリニック経営のことなら
何でも相談して下さい。」

と、佐川氏が言えば、

「先生、どのような些細な事でもご相談下さい!何でもしますので!」

と、黒田氏も更に元気を振りまいてくる。

何かの本で、「気配りの出来る人=元気を配る人」と書いていたのを見たことがある。
それが本当ならば、この黒田氏は気配りが出来る優秀な人なんだろう。
ま、佐川氏よりは何でも相談出来そうだし、何よりもこちらが明るくなってくる。

「ところで先生、早速ですが…。」

黒田氏が切り出した。

 明日へ続く・・・

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3月 14th 2007
税理士事務所を紹介される(第22話)

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世間に疎い自分でも、「明日からクリニック新規開業します!」と言って即日「開業」出来るとは、さすがに思っていなくて、何かしらの届出が必要だろうと前々から思っていた。

ただ、どこに、何を、いつまでに提出しなければいけないのか…、さっぱり分からない。

佐川氏の仕事の進め方からすると、突然、「先生、この書類をいつまでにお願いします!」と言って、膨大な量の書類を渡されかねない。それだけは避けないと…。

「佐川さん、あの…、開業するということを、どこかに何か届出しないといけないんですよね?」

機嫌を損ねないように丁寧に聞いてみた。
この、“機嫌を損ねないように”という姿勢が板についてきた自分が悲しい…。

「先生、そんなこと、当然こちらがやりますので心配しないで下さい。」

そうか、聞いておいて良かった。

佐川氏が更に続ける。

「こちらと言いましても、私がやるのではなく、医療専門税理士事務所の方にお願いしようと思っています。前にも申上げたかも知れませんが、私の仕事は先生が開業されるまでで、その後は医療専門税理士事務所が先生のサポートをします。そろそろご紹介しましょうか?」

そろそろと言われても…、どのタイミングで紹介してもらうのが良いのか分からないから、答えはひとつ。

「宜しくお願いします。」

 

明日へ続く・・・

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3月 13th 2007
先生、どうされますか?(第21話)

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一人ぼっちの内装工事がスタートし、それ以降、急ピッチで色々な判断を求められるようになった。

先生、壁紙の色はどうされますか?私は医院のイメージからこの色がいいと思いますが。」
先生、この部分の広さはこれでいいですか?」
先生、レントゲンはこの辺に置く感じでいいですか?」
先生、この材質はどうされますか?患者さんへの配慮を考えると、少し割高でもこちらがいいと思いますが。」
先生先生…!」

「…。それで宜しくお願いします。」

骨組みだけの現場で、矢継ぎ早に聞かれても返答に困る。何せ、何も考えていないのだから…。

せめて、工事に入る前に「イメージ図」みたいなものを見せてくれていれば…、と、人のせいにしてみる。
よく考えると、今医院の内装工事をやってくれている業者さんの会社名も知らない。いい加減さもここに極まれり…、だ。

内装のことを聞かれるだけでも、少々うんざりしているのに…、

医療器械のこと、スタッフは何人雇うのか、シフトはどう組むのか、診療時間は、求人広告はどうするか、医院の広告はどうするのか、ホームページはどういうイメージで作るのか…。

先生、どうされます?」

開業までのスケジュールからすれば、直前にピッチが上がるのは仕方ないことなのだが、大まかなスケジュールだけでなく、詳細に「いつ、何をする」ということを教えてくれていれば、もっと違ったのに…、

「どうされます?」じゃないだろう。

こういう細かいことを決めなければいけないと事前に分かっているのであれば、先に言ってくれよ!と、またまた他人のせいにしてみる。

これから、もっともっと細かいことが出てくるんだろう。覚悟だけはしておかないと…。

 

明日へ続く・・・

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3月 12th 2007
テナントはウチだけ?(第20話)

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内装工事がスタートしたというのに、他のテナントは工事を始める気配が無い。

どうやら、この医療ビルで9月からオープンするのはウチだけで、残りの3件は空き室のままらしい。とは言うものの、他は“交渉中”と聞いていたので、そのうち入るものと思っていた。

ところが…、

なんと、1階は「調剤薬局」で、この医療ビルは、この調剤薬局さんが企画し、現オーナーに持ってきた話だったとのこと。「1件は入居が決まってまして…」と言われていたが、最初から決まっているテナントだったのか。

ということは、募集で入居したのは自分だけか。早い者勝ちというのはウソだったのか…?

早速、佐川氏に聞いてみる。

「いやね、3件ともほぼ決まっていたんですがね、皆さん色々事情があって辞退されまして…。」

普通、3件とも足並みを揃えて「辞退」するか?どうも話が胡散臭い。

「しかし、先生、これだけの物件ですから、次々と問い合わせが来ています。だから、もうすぐ埋まるでしょう。」

問い合わせがあるのかどうか知らないが、内装工事が始まってから何回か現場に足を運んでいるものの、見学者っぽい人を見たことがない。

今さら、何を言っても始まらないので、「そうですか…」と話を切ったが…、
平成19年の今では、単なる「医療雑居ビル(色々な診療科目の寄集め)」を作るだけではいけないということがようやく認知され、モール形式やビレッジ形式で連携を強化し…、

という取り組みがなされているが、平成16年当時はラッシュと言ってよいほど、医療ビルやら介護施設が入居する、単なる“雑居ビル”が建設されていた。
入居者が医療機関であれば、高い家賃が安定して入るというイメージが当時はまだまだ強く、診療報酬の改訂や患者の自己負担増等、医療経営環境の悪化が目に見えているにも関わらず、医療業界をよく知らないコンサルタントと称する人たちが「儲かりますから建てましょう!」と音頭をとったことも大きな要因ではある。

その結果、医療ビルが乱立し、何のコンセプトも持たずに建てただけの所はテナントが虫食い状態であったり、閉鎖されていたり…、目も当てられない状態になっているビルも多い。

しかし、そんな事情を知ったのはつい最近のことで、当時は「流行の医療ビル」だからと安心し、夢にも“そんな物件”とは思いもよらなかった。

 

明日に続く・・・

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3月 9th 2007
内装工事はじまる!(第19話)

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非常に後味の悪い「賃貸借契約」も終わり、内装工事がスタートした。
 

あとは、完成を待つばかり。一体どんなクリニックが出来るのだろう。
 

一体どんなって…、自分の「城」であるにも関わらず想像もつかないのか?
 

今から思えば寒い話だ。
 

事前に図面を見せてもらってはいるが、現物を見ない限りよく分からない。相変わらず「お任せ」状態。
 

「先生、ご希望がありましたら、いつでも結構なので仰って下さい!」
 

と、佐川氏も言ってくれているので、ある程度完成してから気になるところは変更すればよいか。
 

入口があって、受付があって、待合室があって、そして診察室、処置のスペース…、特段、こだわりがある訳でもないし、佐川氏が、医院専門の工事会社と言っていた業者さんなので、素人が口出ししてもなあ…。


 何か言えば佐川氏が機嫌を損ね、説教する…。という流れが出来上がっていたので、いまさら何も言うまい。
 

この甘い判断が、後に「追加工事費用」として跳ね返る訳だが…。
 

とりあえずは、職人さんが手を抜かないように祈るしかない。自分に出来ることはその程度なのが悲しい…。
 

 明日に続く・・・

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3月 2nd 2007
建物賃貸借契約(第18話)

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何とか銀行融資がOKとなり、クリニック開業へ向け落ち着いたのももつかの間、すぐに必要なお金として、ビルへ支払う「保証金」及び、工事会社に払う「手付金」が発生するとのこと。

先日の独自(ただ歩いただけの)診療圏調査の不安を抱えたまま、佐川氏に連れられて契約の場に来た。

「それでは、早速契約しましょうか。」

と佐川氏が音頭を取るやいなや、オーナーが口火を切って契約書を読み始めた。

「え~、すでにご存知と思いますが、家賃は佐川さんにお願いされて504,000円、管理費は126,000円…。」

「はぁ?管理費?そんなもの聞いてませんよ!」

すかさず、佐川氏が口を挟む。

「先生、私、言ってませんでしたっけ?すみませんねえ。しかし、家賃以外に管理費がかかるのは常識ですよ。

常識かどうか知らないが、払うこっちは月12万以上の負担が増える。余りにも不親切だろう。
親父に指摘された時に、すぐに確認すれば良かった…。しかし、あとの祭りだ。

とは言うものの、感情は抑えられない!

「佐川さん、私は家賃を504,000円で計算して資金繰りを考えていたんですよ!どうしてくれるんですか!」

思わず私は声を荒げてしまった。

「どうするも何も、金額的にどうしようもないですね。他の店子さんも払ってくれるものですし…。何なら、この契約を止めますか?銀行の融資から何からストップして全て一からやり直しますか?」

そう来たか。佐川氏がいなければ何も出来ないと完全に足元を見ている。

しかし、残念ながら、新規クリニック開業を一から自分1人でやり直す根性は私にはない…。

「分かりました。大きな声を出して失礼しました。これでお願いします…。」

「さすが先生、人格者ですね!これで先生の医院は繁盛間違いなしですわ!」

この時ほど、「人格者」という言葉が体に突き刺さるように響いたことはなかった。
人に手玉に取られるというのはこういうことか…。
人生でこれほど悔しい思いをしたことはない。

 

明日へ続く・・・

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3月 1st 2007
お前、大丈夫か?:後編(第17話)

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普通なら、自分が新規開業するクリニック周辺のことは非常に気になるはずだが、「1日80人は確実!」という太鼓判をもらっているせいか、何となく安心してしまっている。

親父からすれば、信じられないのだろう。

何回も言うように、医者としての自分の腕に自信があった。

評判が評判を呼び、大した広告を出さなくても患者は増えると思っていた。だから、正直な話、競争相手がどうのこうのという話題は興味が無かった。

それに、今の病院でも「いい人」という人格者で通っているので、スタッフを扱うのにも自信があったし、患者受けも今の病院では良い方だ。

何をそこまで心配することがあるんだろう…?

ま、親父がそこまで言うのなら、一度歩いてみるか…。

以前、佐川氏からもらった「診療圏調査結果」を片手に、当直明けの時間を利用して歩いてみた。
「意外と人が少ないなあ…。」

最初の実感だ。通勤・通学以外の時間帯だったせいもあるが、駅に併設されたショッピングセンターも思いの他、人が少ない。駅周辺から少し外れると、古い住宅街になっていて、お年寄りが多そうだ。しかし、ウチの医院があるクリニックビルに歩いて来てもらうには少し距離がある。

親父が言うとおり、クリニックは非常に多い。それぞれの地域に早くから根ざしているであろう少し古いクリニックは溢れるほどではないが患者さんが多い。逆に、新し目の、駅商店街の中にあるクリニックは閑古鳥が鳴いている。
なるほど、新しくクリニックが出来たからといって、わざわざ変更しないということか。

そうなると、自分が新規開業したからといって、患者が来てくれるという保証は全く無い。評判も何もあったものじゃない。

改めて、「診療圏調査結果」を読んでみたら、駅の乗降者数が書いてあったが、確かにひとつの参考になるものではあるが、日中のこの人の少なさ、つまり、みんながこの駅から出て行ってしまうと全く無意味なデータなのではないだろうか?
また、競合の開業医の数も書いてあったが、それぞれの医院がどのような特徴・サービスをしているのかどうかについては全く言及していない。流行っているのかどうかも書いていない。

さらにヒドイのは、競合の開業医として書いてある1つの医院は、昨年「廃院」になっていた。

もっと言うと、診療圏としてコンパスで「円」が書いてあったが、ウチが新規開業するビルの南方は「マンション予定地」やら「駐車場」やらが多く、人がいない…。池もある。これらを省いて見ると、ウチのクリニックの診療圏は狭すぎる…。

この調査結果は信用出来るの…?お前、大丈夫か?と思わず自分に言ってしまった…。

 

明日へ続く・・・

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